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公開日 2026年7月10日
インシデントとは、システムの正常な稼働や業務を脅かす事象全般を指す言葉です。近年は不正アクセスやヒューマンエラーによる情報漏えいが相次いでおり、企業規模を問わずインシデント対策の重要性が高まっています。
この記事では、インシデントの意味やアクシデントとの違い、IT分野で発生しやすい具体例、対策方法をわかりやすく解説します。インシデント対策を進めたい方は、ぜひ参考にしてください。
インシデント(incident)とは、直訳すると「できごと」「事件」を意味する言葉です。一般的なビジネスシーンでは、重大な事故につながる恐れのある「ヒヤリハット」的な事象を指すこともありますが、IT分野においては実害の有無に関わらず、システムの正常な運用や情報管理を脅かす事象全般を「セキュリティインシデント」と呼びます。
具体的には、以下のような情報セキュリティ上の問題が幅広く含まれます。
インシデントへの対応が遅れると、システム停止や漏えいした情報の悪用など、重大な被害へ発展する可能性があります。そのため、インシデントを迅速に検知し、影響範囲の特定やシステムの隔離・停止などの初動対応を速やかに実行することが重要です。
インシデントは、アクシデントやヒヤリハットと混同されることがありますが、それぞれ意味が異なります。ここでは、インシデントと混同されやすい関連用語との違いを解説します。
アクシデントとは、実際に被害や損害が発生した「事故」のことです。一般的なビジネスシーンや医療・製造の現場などでは、「実害が発生したものをアクシデント」「実害が出る一歩手前の事象をインシデント」と明確に区別して使われることがよくあります。
一方で、ITや情報セキュリティの分野においては、実害の有無にかかわらず脅威となる事象全般を「インシデント」として扱うため、アクシデントとほぼ同義、あるいはアクシデントを内包する言葉として使われる点に注意が必要です。
ヒヤリハットとは、事故には至らなかったものの、「ヒヤっとした」「ハッとした」と感じる危険な体験を指します。事故の前兆という意味では、インシデントと共通しており、同じように使われることもあります。
しかし、ヒヤリハットは主に人の不注意や判断ミスなど、人的要因によって発生する事象を指す点が特徴です。例えば、急いでいて人とぶつかりそうになったり、熱いものに触れて火傷しそうになったりするケースが挙げられます。
一方でインシデントは、サイバー攻撃やシステム障害など、人以外の要因によって発生する事象も含まれる点がヒヤリハットとの違いといえるでしょう。
ヒヤリハットやインシデントを放置すると、アクシデントにつながる恐れがあります。アメリカの安全技師であるハインリッヒが提唱した「ハインリッヒの法則」では、1件の重大事故の背後には29件の軽傷事故と、傷害のない事故が300件存在すると指摘されています。
些細なヒヤリハットやインシデントであっても見過ごさず、組織内で情報共有を行い、再発防止策を検討することが大切です。
企業では内部要因だけでなく、サイバー攻撃やシステム障害などの外部要因によってもインシデントが発生する可能性があります。
続いて、ビジネスやIT部門で発生するインシデントの具体例をご紹介します。
マルウェア感染や不正アクセスなどのサイバー攻撃は、代表的なインシデントの一つです。
例えば、マルウェアの一種であるランサムウェアに感染すると、パソコンやスマートフォンのファイルが暗号化され利用できなくなり、復旧と引き換えに身代金を要求されます。
近年では、身代金を支払わない場合に盗み出したデータを公開するという「二重恐喝(ダブルエクストーション)」が主流です。そのため、業務停止による損失だけでなく、信用問題につながるリスクも高まっています。
また、企業のサーバーや情報システムへの不正アクセスが発生すると、ホームページの改ざんや顧客情報の窃取、偽サイトへの誘導などの被害を受ける可能性があるでしょう。サイバー攻撃の手口は多様化しており、企業には継続的なセキュリティ対策が求められています。
参考:ランサムウェア、あなたの会社も標的に?被害を防ぐためにやるべきこと|政府広報オンライン
参考:不正アクセスとは?|国民のためのサイバーセキュリティサイト
従業員のヒューマンエラーによって、インシデントが発生するケースもあります。
具体的には以下のような事例が挙げられます。
機密情報や顧客情報が外部へ流出した場合、企業の信用低下につながるだけでなく、さらなるサイバー攻撃が発生するリスクも高まるでしょう。
システムダウンやネットワーク障害が原因となり、インシデントが発生する事例があります。
例えば、サーバーの故障やクラウドサービス障害、通信回線のトラブルが起こると、自社サイトが利用できなくなり、顧客向けサービスの提供が停止する可能性があります。
ITシステムへの依存度が高まる現代企業において、このような障害が長期化すると、業務の停滞を招くだけでなく、顧客にも大きな影響が生じるでしょう。
ここでは、インシデントが発生した際に企業が受ける主な影響を解説します。
インシデントが発生すると、システムの停止による機会損失や復旧対応にかかるコストなど、経済的なダメージにつながる可能性があります。
例えば、ECサイトがサイバー攻撃やシステム障害によって利用できなくなると、商品の販売機会を失い、売上減少につながります。サイトの表示速度が著しく低下した場合も、ユーザーの離脱を招き、収益に悪影響を及ぼすでしょう。
また、原因調査やシステム復旧、再発防止の実施には多くの人的リソースが必要です。外部のセキュリティ専門会社へ対応を依頼する場合は追加費用も発生するため、企業の収益を圧迫する要因となります。
顧客情報の漏えいや長期間にわたるサービス停止など、影響範囲が大きいインシデントが発生した場合、企業はその事実を公表しなければなりません。
たとえ顧客情報が悪用されていなかったとしても、セキュリティ管理体制への不信感を抱かれてしまい、顧客離れや新規取引の停止などにつながる可能性があります。
また、インシデントに関する情報は、ニュースサイトやSNSを通じて急速に拡散することがあります。一度低下した企業イメージを回復するには時間を要するため、長期的な売上低下や企業価値の低下を招く恐れがあるでしょう。
参考:中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き|独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)
インシデントの内容や被害規模によっては、企業が法的責任を問われたり、損害賠償請求を受けたりする可能性があります。
例えば、不正アクセスによる個人情報流出の際には、企業の安全管理措置が不十分と判断されると、個人情報保護委員会から指導を受けることがあります。
また、流出した情報によって顧客が損害を被った場合、企業や経営陣の責任が問われ、損害賠償請求に発展するケースも考えられるでしょう。
特に、クレジットカード情報や銀行口座情報などの二次被害につながる可能性が高い情報が流出した場合は、被害が拡大しやすく、企業が負担する賠償額も高額になる傾向があります。
インシデント管理とは、インシデントが発生した際に状況を迅速に把握し、被害の拡大を防ぎながらサービスやシステムを早期に復旧させるための取り組みです。インシデントを完全に防ぐことは難しいため、対応体制を整備し、影響を最小限に抑える必要があります。
ここでは、インシデント管理の重要性について解説します。
インシデント発生時の対応手順が明文化されていない場合、担当者しか状況を把握できず、担当者の不在時に対応が遅れる可能性があります。その結果、被害が拡大し、システム停止時間の長期化につながる恐れがあります。
一方で、対応フローや連絡体制が整備されていれば、誰でも一定水準の対応ができるため、初動対応がスムーズになるでしょう。
また、対応手順をマニュアル化することで作業の抜け漏れを防ぎやすくなり、システムやサービスの復旧までに要するダウンタイムの短縮につながります。
インシデントに迅速に対応するには、発生したインシデントを記録・分析し、再発防止に活用することも重要です。
例えば、過去にログインIDやパスワードの漏えいが発生している場合は、その原因や対応手順、解決までに要した時間などを分析できれば、次回以降の対応をより迅速かつ適切に行えます。
また、分析結果をもとに、パスワードの使い回しを禁止したり、多要素認証(MFA)を導入したりすると、同様のインシデントの発生リスクを低減できます。
参考:中小企業のための実例で学ぶサイバーセキュリティリスク事例集|独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)セキュリティセンター
インシデント管理を運用するには、いくつかの課題や注意点を理解しておく必要があります。
代表的な課題として、以下のような点が挙げられます。
当事者が「大した問題ではない」と判断した事象でも、事故の前兆である可能性があります。そのため、インシデントの大小にかかわらず報告を徹底するルールづくりや、気軽に相談・共有できる組織文化の醸成が重要です。
また、対応マニュアルが古いままでは、実際の運用環境に適した対応ができず、復旧の遅れにつながるかもしれません。定期的な見直しと更新を行い、常に最新の状態を維持することが大切です。
インシデント管理は原因究明よりも、まずは被害の拡大防止とシステムやサービスの復旧を優先する必要があります。根本原因の分析や将来的な対策は、インシデント対応後の「問題管理」で実施するため、対応の優先順位を誤らないよう注意しましょう。
ここでは、インシデントを未然に防ぐための対策をご紹介します。
サイバー攻撃によるインシデントを防ぐためには、システムやネットワークのセキュリティを強化することが重要です。
具体的には、以下のような対策が挙げられます。
OSやソフトウェアが古い状態のままデバイスを利用していると、脆弱性を悪用したサイバー攻撃の標的になりやすくなります。アップデートを習慣化し、常に最新版を利用することが重要です。
また、ウイルス対策ソフトやファイアウォールを活用して不正な通信を遮断することで、マルウェア感染や不正アクセスのリスクを低減できます。
参考:5分でできる!情報セキュリティ自社診断|独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)
参考:セキュリティ対策ソフトを活用しよう| 国民のためのサイバーセキュリティサイト
インシデント対策では、社内ルールを策定して適切に運用することが重要です。
例えば、システムやデータへのアクセス権限を必要最小限とすれば、情報漏えいや不正利用のリスクを抑えられます。
また、退職者や異動者のアカウントが残ったままになっていると、不正アクセスや情報漏えいの原因となる可能性があります。退職や人事異動のタイミングに合わせて、不要なアカウントを速やかに削除する運用体制を整えることが大切です。
さらに、パスワードポリシーを策定し、十分な文字数や複雑性を確保するとともに、パスワードの使い回しを禁止する対策が効果的です。特に重要なシステムでは、多要素認証(MFA)を導入することで、パスワードが流出した場合でも不正ログインによるリスクを軽減できます。
参考:5分でできる!情報セキュリティ自社診断|独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)
システム面の対策だけでなく、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることもインシデント対策で重要なポイントです。
例えば、以下のような教育内容が挙げられます。
セキュリティ教育を継続的に実施し、組織全体のセキュリティ意識が向上することで、サイバー攻撃やヒューマンエラーによるインシデントの発生リスクを低減できるでしょう。
インシデントが発生した際には、状況を迅速に把握し、関係者間で正確な情報を共有することが重要です。ここでは、インシデント発生時の情報共有を支援するZoomのソリューションをご紹介します。
Zoom Workplaceは、チャットやWeb会議、ドキュメント共有などのコミュニケーション機能を一つに統合したプラットフォームです。
Zoom ChatやZoom Meetingsをはじめとする各種機能を利用することで、インシデント発生時に部門や拠点をまたいだ情報共有をスムーズに行えます。関係者がリアルタイムで状況を把握できるため、対応方針の決定やタスクの割り振りを迅速に進めることが可能です。
また、ドキュメント共有機能を活用すれば、対応手順書や状況報告書を共同編集できます。情報が集約されることで、効率的なインシデント対応につながります。
Zoom Phoneは、クラウド型のビジネス電話サービスです。
パソコンやスマートフォンから利用できるため、オフィス勤務はもちろん、テレワーク中や外出先からでもスムーズに連絡できます。インシデント発生時には、担当者や責任者への迅速な連絡・招集が可能となり、初動対応のスピード向上に役立ちます。
また、トランシーバー(プッシュツートーク)機能を利用すれば、ボタン一つで音声情報を即座に共有できるため、現場の状況や対応の進捗を関係者へスムーズに伝えることが可能です。
さらに、ZoomのAI機能による要約を活用することで、対応履歴や重要事項を効率的に記録できます。これにより、関係部署や専門機関への情報共有や引き継ぎもスムーズに行えるでしょう。
インシデントの対応が遅れると、業務停止や顧客からの信頼低下といった深刻な被害を招く恐れがあります。そのため、システムの脆弱性対策や従業員へのセキュリティ教育などを通じて、インシデントの発生を未然に防ぐことが重要です。
また、万が一インシデントが発生した場合に備え、迅速に情報共有ができる体制を整備しておく必要があります。
Zoom Workplaceは、チャットやWeb会議、ドキュメント共有を一つのプラットフォームで利用できるため、関係者間の連携をスムーズに行えます。Zoom Phoneは、迅速な音声コミュニケーションに対応しており、初動対応のスピード向上に役立つでしょう。
インシデント発生時の情報共有や対応体制の強化を図りたい方は、ぜひ導入をご検討ください。