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公開日 2026年5月19日
「今の職員数の4分の1、500人でも回る市役所を作る」――奈良市の仲川げん市長はそう宣言し、行政の構造改革を推し進めています。
人口減少と働き手不足が加速する日本において、自治体の業務効率化は待ったなしの課題です。その最前線に立つ奈良市が選んだのが、固定電話の全廃とZoom Phoneへの一斉移行でした。
本記事では、年間131万件にのぼる電話対応コスト削減を起点に、「プッシュ型の行政サービス」という未来像を描く奈良市の改革ストーリーをご紹介します。
全国的に人口減少が進み、地方自治体の存続が危ぶまれる中、奈良市も同様の深刻な事態に直面しています。単なる人員削減ではなく、将来的に職員数が激減しても行政サービスを維持し、さらに向上させるための根本的な構造改革が求められています。

日本全体が直面する「人口減少・働き手不足」という国難の中、奈良市でも成人式の出席者が3,300人に対して直近の出生数は1,700人と、20年後には新成人が半分以下になることが見込まれています。
これからの半世紀、人口減少が続く社会構造の変化に対して、奈良市は「30年後に職員数が現在の約4分の1である500人体制になることを見据える」という「奈良市役所30年構想」を掲げました。
これは単に人を削るという受動的なリストラではありません。「採用したくても人が採れない時代」が来ることを前提とし、追い込まれる前に「500人でも回る組織」へと自ら構造改革していくという、極めて前向きな宣言なのです。
変革を実現するためには、これまでの延長線上にある行政運営では立ち行かなくなります。日本の行政には「アナログ規制1万条項」とも呼ばれる紙・ハンコ文化が根強く残っており、仲川市長は、前例踏襲や紙・ハンコを重視するアナログな仕組みを「日本のOSを再起動する」と表現しています。
現在の業務プロセスをそのままに、ただ職員数だけを減らせば、当然ながら現場は崩壊し、市民サービスは低下してしまいます。
だからこそ、今いる職員を単に削るのではなく、テクノロジーを前提とした新しい仕組みをゼロから構築し、組織のOSを根本から「再起動」する必要があるのです。
行政サービスの根幹を支える市役所業務において、長年改善のメスが入りにくかったのが電話対応です。そこには莫大な人件費と、可視化されていない情報のブラックボックスが存在し、職員と市民の双方に大きな負担がかかっていました。

市役所業務において、最も職員の時間と労力を奪っていたのが「電話対応」でした。
奈良市では、コールセンターへの入電が年間約14万件、各課への直通電話が年間約117万件にのぼり、合計すると市役所全体で年間131万件もの電話が殺到していました。営業日に換算すると、1日あたり約5,000件もの対応に追われている計算になります。
コールセンター白書によれば、1件の対応にかかる時間は平均して10分です。これを奈良市の人件費に置き換えると1件あたり785円となり、実に年間約10億円分もの人件費が「電話対応」という業務に奪われている事実が浮き彫りになりました。
電話対応が抱える課題は、莫大なコストだけにとどまりません。コールセンターに入電した14万件のうち、約10万件は担当課への転送が発生していました。
つまり、1回の電話で用件が完結せず「たらい回し」にされるケースが多発しており、これが市民の利便性を大きく損ねる不満の種となっていたのです。
また、従来のアナログな電話というチャネルは、通話内容がデータとして蓄積されにくく、情報がブラックボックス化していました。どのような問い合わせが多いのか分析ができず、行政サービス全体の効率を下げてしまう点も、早急に見直すべき構造的な問題でした。
奈良市は、この山積する課題を解決するため、行政の常識では考えられないほどのスピードでシステムの刷新を断行しました。
そこには仕組みを理由に立ち止まらない、トップの強い意志と決断、そして強力なパートナーシップがありました。

アナログな電話対応の限界を打破するため、奈良市は庁舎の机にあった有線の固定電話をすべて撤廃するという大胆な決断を下し、クラウド型PBXである「Zoom Phone」と新たなAIコンタクトセンターへと一斉移行しました。これにより、コールセンターの直接経費だけでも約5,000万円の削減を見込んでいます。
単なるコスト削減にとどまらず、スマートフォンで場所を問わない電話対応が可能になったことで、災害時などにおける業務継続性(BCP)も大きく向上しました。

この改革で特筆すべきは、その裏側にある圧倒的なスピード感です。入札からシステムの導入、そしてコールセンターの引き継ぎ完了までにかかった期間は、保守的な行政としては異例中の異例であるわずか「2ヶ月半」でした。
「国の法律のせいだから」「昔からのルールだから」と諦めるのではなく、奈良市は市の裁量で変えられる1,025件のアナログ規制(紙やハンコを求める手続きなど)を、自らの手でこの春に一気にデジタル化完了させました。
仲川市長は「市がやる気になれば変えられるものが実は1,000件以上ある。トップがどちらを向いているかで行政サービスは大きく変わる。」と力強く語ります。トップの決断力があれば、短期間で劇的な変革が可能であることを証明したエピソードといえます。
今回の改革は、電話をデジタル化して終わるものではありません。その真の目的は、効率化によって生み出されたリソースを未来への投資に回し、市民に「寄り添う」新しい行政の形を実現することにあります。
電話業務の効率化は、改革のゴールではありません。奈良市が描く次の構想は、これまでの通話データを活かし、Zoom Virtual Agent(ボイスボット)などによる音声対応の領域を拡大していくことです。
これにより、現在の平日の日中だけではなく、夜間や休日であっても、市民の疑問に24時間365日即座に答えられる体制の構築を目指しています。
さらに、業務の効率化によって浮いた予算と時間は、AIへの新たな投資や、さらなる市民サービスへの直接還元に充てるというビジョンもあります。
テクノロジーが実現する行政の未来図は、申請しなければ支援を受けられない「申請主義」からの脱却です。
これまでは、市民が自ら調べ、自ら申請しなければ必要な支援を受けられませんでしたが、奈良市では現在、ひとり親家庭に対して毎月5kgのお米を「不要な場合のみ断る」というプッシュ型で無料配布しています。
このように、システムが対象者を自動的に把握し、行政側から必要な支援を届ける「プッシュ型サービス」への転換を進めており、将来的には、市民と行政の双方が持つAIエージェント同士が自動的にやり取りし、必要な支援を届ける「枕元に寄り添う温かい行政」の実現を、テクノロジーの活用によって目指しています。
奈良市の事例は、特別なものではありません。全国の自治体や企業が共通して抱える「人手不足」という課題に対する、一つの力強い解と言えます。
市長が語った「行政という組織でもできるのだから、民間であればはるかに上回るスピードでできるはずだ」という言葉は、DX推進に悩む方々にとって、大きな行動喚起のきっかけとなるはずです。
住民サービスを向上させる第一歩は、「電話業務の改革」から始まります。
次なる変革の強力なパートナーとして、Zoom Phoneが自治体OS再起動をサポートします。Zoomのツールを強力なパートナーとして迎え入れ、次なる変革への歩みを進めてみてはいかがでしょうか。