CX 金融サービス AI

金融機関におけるAI:AIエージェントの力を顧客満足度の向上に活用

ゲストオーサーであるBeth Schultz氏(Metrigyのリサーチ担当副社長兼プリンシパルアナリスト)が、金融機関での顧客満足度向上にAIを活用する方法とテキストエージェントや音声エージェントがもたらす革新的な価値について説明します。

5 分で読める

更新日 November 10, 2025

公開日 November 10, 2025

画像のプレースホルダー
Beth Schultz
Beth Schultz
Metrigy リサーチ担当副社長兼プリンシパルアナリスト

金融機関は、一貫して優れた顧客体験(CX)を提供するという点において、特有の課題に直面しています。現代の顧客は、問い合わせに対する迅速かつパーソナライズされた回答を期待しており、口座の状況やその他の関連情報に関する通知を積極的かつ安全に受け取ることにも期待を募らせています。データサイロやシステムの複雑さ、規制遵守などの問題はほとんど気にしていません。

人工知能(AI)は、顧客体験の向上により顧客の期待に応えつつ、サービス提供を阻害するような問題を防ぎます。金融機関はAIの活用をためらっていません。これは、Metrigyが今年初めに実施したグローバル調査「AI for Business Success: 2025-26(ビジネスで成功するためのAI:2025~2026年)」でも明らかです。実際、この調査では、金融サービス業界がAI導入において他の業界をリードしており、目に見えるパフォーマンス向上を実現していることが明らかになっています。

調査対象となった金融機関のほとんどが、顧客と従業員のやり取りにAI を広く活用しているだけでなく、80.6%が顧客とやり取りするチャネルでもAIを応用しています。顧客向けのユースケースでAIの導入を2026年以降まで延期している企業はわずか5.4%に過ぎません。

顧客に対応するバーチャルAI音声エージェントとテキストエージェント(特に高度な対話型AIエージェントおよび生成AIエージェント)は、金融機関を単純なQ&A機能から脱却させ、大きな変革をもたらしています。

AIエージェントは、複雑なレガシーシステムと顧客をつなぐ存在であり、高額な費用をかけてコンタクトセンターのインフラストラクチャを全面的に見直すことなく、現代的なエクスペリエンスを実現できます。Metrigyの調査では、参加した金融機関の間でバーチャルAIエージェントが積極的に導入されていることが明らかになり、67.7%がすでにAIテキストエージェントを実装しており、59.1%がAI音声エージェントを使用しており、残りのほぼすべての金融機関が両方のエージェントを導入予定であるか評価中です。

Metrigy:顧客満足度の向上におけるAIの現状(2025年)

ユースケース:AIエージェントを主要な財務プロセスに統合する

バーチャルAIエージェントは、通話やその他のライブエージェントとのやり取りを回避するのに優れていますが、アカウント管理、営業、セキュリティなどの機能に直接影響を与える複雑なトランザクションタスクの処理する上でも適しています。金融機関における顧客対応型バーチャルAIエージェントの一般的な使用例は以下のとおりです。

  • カスタマーサービスと口座管理の自動化:コールセンターの負荷とコストを大幅に削減する、基本的なユースケースです。バーチャルエージェントは、口座残高、最近の取引履歴、支店の所在地の確認といった日常的な問い合わせに即座に対応し、請求書の支払い、口座間の資金移動、定期支払いのスケジュール設定など、安全かつシンプルな取引もサポートします。また、カード会員への対応として、デビットカードやクレジットカードのロックやロック解除、紛失・盗難カードの報告、暗証番号の変更といったリクエストにも対応します。
  • パーソナライズされた金融ガイダンスと販売:バーチャルエージェントは、機械学習と顧客データを活用することで、お客様一人ひとりに合わせたアドバイスを積極的に提供します。取引履歴を分析することで、支出や予算に関するインサイトを提供し、貯蓄目標の達成に役立つヒントも提供します。バーチャルAIエージェントは顧客のプロフィールと支出習慣に基づき、高金利の貯蓄口座から新規クレジットカードまで、関連性の高いパーソナライズされた商品を推奨できるため、営業においても重宝します。また、通常とは異なる支出やクレジットカードの支払期限に関する先回りしたアラートも広く利用されています。
  • 複雑なプロセスの効率:多くの金融機関では、バーチャルAIエージェントにより、書類中心の作業を簡素化しています。例えば、バーチャルエージェントはローンや住宅ローンの申請者を申請の初期段階までガイドし、基本的な資格要件の質問に答えながら、事前審査に必要な書類をリアルタイムで収集することができます。また、保険の加入者による保険金請求の開始や状況の確認、保険契約に関する質問への回答の取得などをサポートします。
  • セキュリティと不正防止:バーチャルAIエージェントは潜在的なセキュリティ脅威について顧客に即座に連絡することができます。これには、疑わしいアクティビティが検知された際に、音声またはテキストエージェントを介して不正行為に関する予防的なアラートを発信し、顧客が取引を確認またはブロックするよう誘導することが含まれます。また、AIは機密性の高い口座機能へのアクセスを許可する前に、セキュアな多要素認証を実行します。

このような機能により、バーチャルエージェントは、金融機関がコンタクトセンターでのやり取りの42.5%をライブエージェントのサポートなしで解決することを可能にします。

金融機関でのAIの成果を数値化する

Metrigyが調査で評価した4つのビジネス成功指標全体において、最も高い改善結果が報告されたのが金融機関。このセクターでは、AIを活用することで、トップクラスの顧客体験と大幅な財務利益がもたらされることが実証されています。AIによる効果を測定する金融サービス企業のパフォーマンス指標とそれに伴う改善結果は以下の通りです。

  • 78%の金融機関が顧客体験の向上に向けたAIの導入によりCSATを改善。平均で41%の増加を実現しています。
  • 72%の金融機関で売上が増加。平均では36%の増加となっています。
  • 71%の金融機関で従業員の生産性が向上。平均で39%向上されています。
  • 63%の金融機関が運用コストを削減。平均で29%コストを抑えられています。

さらに、金融機関では、目に見える効果が急速に表れてきており、72%弱の企業がAIによる投資収益率(ROI)がプラスであると報告しており、13.5%が今後12か月以内のROI向上を予想しています。このように効果が迅速に表れていることが、この分野におけるAI連携の緊急性と成果を強調しています。金融機関の約3分の2は、すでにAIの使用を広範囲にわたるものと位置づけています。つまり、すべてのビジネス部門またはほとんどのビジネス部門でAIが使用されており、中でもカスタマーサービスやコンタクトセンターは、AIから恩恵を受ける主要な分野の1つとなっています。

調査対象となったほとんどの金融機関では、AIテクノロジーの購入決定が取締役または経営幹部にかかっており、こうした取り組みが極めて重要であることが示唆されています。

企業全体の前向きな変化を導き、効率性を高めるため、金融機関の44.1%がすでにAIセンター・オブ・エクセレンス(CoE)を設置しており、53.8%が設置を計画しています。AI CoEの設置は、組織全体でAIの有用性を最大限に高める上で特に効果的であり、専門知識や共通の目標、明確に定義されたガバナンスを共有し、コンプライアンスを確保するのに役立ちます。

今後の展望

金融サービス業界に身を置く企業は、優れた顧客体験の創出におけるバーチャル音声エージェントやテキストエージェントなどのAIの価値を既に認識しています。Metrigyの「AI for Business Success(ビジネスで成功するためのAI)」調査でも明らかなように、AI関連の支出は終わりが見えず、さらに増加する傾向にあり、2026年までその勢いが続くでしょう。当社の調査によると、金融サービス業界におけるAI技術関連の支出は、2025年に29.2%、2026年には36.1%増加すると予測されています。バーチャルエージェントは、エージェントアシスト、AIエージェント、対話型分析などと並んで、今後の成長が見込まれる分野です。

現在、ほとんどの金融機関は、タスク指向の役割をバーチャルエージェントに割り振ることに大きな価値を見出しており、顧客からの問い合わせに対応するバーチャルエージェントからの移行が予想されます。複数のステップから成る複雑な金融ワークフローを自律的に計画し実行できる、よりプロアクティブなAIエージェントが生み出され、ローン申請の処理やエンドツーエンドでの詐欺事件の解決などを担当するようになるでしょう。

監査に合格するAI:AIエージェントが金融機関の顧客体験を変革する仕組み

AIエージェントを搭載したZoom Virtual Agentは、人間が介在していなくても、あらゆるセルフサービスインタラクションをパーソナルかつ親切で、人間味あふれるものにします。 パーソナライズされたZoom Virtual Agentのデモ またはその他のZoom CX製品のデモを見て、どれだけ迅速にライブ配信できるかをご確認ください。

ご愛顧いただいているお客様

Okta
NASDAQ
楽天
Logicool
Western Union
オートデスク
Dropbox
Okta
NASDAQ
楽天
Logicool
Western Union
オートデスク
Dropbox

Zoom - すべてのつながりをひとつのプラットフォームで