顧客接点の「暗黙知」を「組織知」へ みずほ銀行が挑むリモート法人営業の最前線

Zoom Phoneで通話内容をデータ化使いやすさと業務効率化を両立するDXを実現

顧客接点の「暗黙知」を「組織知」へ みずほ銀行が挑むリモート法人営業の最前線
Mizuho logo
設立 :

2002年

本社所在地:

東京都千代田区大手町1丁目5番5号

業界:

金融

課題:

顧客とのコミュニケーションの大半が電話で占められていたが、日々の活動記録は手書きのメモ頼り。1日数十件にのぼる通話内容の記録に時間がかかっていた。また、電話や1対1のやり取りになりやすく、各メンバー知見がブラックボックス化。①業務効率化、②将来の活用を見据えたデータ保存、の2軸を解決すべく、クラウドPBXの検討を始めた。

導入成果:

自動文字起こしと要約を活用し、活動記録の作成時間が1日あたり1時間から10~20分程度に短縮。通話料固定のライセンス契約により、競合他社と比較し約3割のコスト削減を実現。トップ営業のトークスクリプトや難しい商談の進め方などの音声やテキストデータをアーカイブし、チーム全体の資産として参照できるようになった。不審な電話を一括でブロックするなど、ユーザー管理の面でもメリットを感じている。

導入ソリューション

2025年夏、みずほ銀行のリモート法人営業組織が、クラウドPBX「Zoom Phone」およびWeb会議ツール「Zoom Meetings」を300ライセンス規模で本格導入しました。

 

全国の金融機関でも珍しい、リモート完結型の法人営業組織として新設された法人営業オフィスは、顧客との密な接点こそが営業活動の生命線です。中でも、お客様にとって最も身近な電話が、顧客コミュニケーションの大半を占めています。日々蓄積されていく通話データを適切にデータ化し、記録・共有することで、組織全体のパフォーマンス向上や新たなツール開発につなげようと活用を始めています。

 

業種業界を問わずDXや生成AI活用の重要性が高まる中、金融機関はどうあるべきか? テクノロジーを活用し、従業員も顧客も、もっと便利に——従来とは異なるコミュニケーションスタイルに対応し、銀行の可能性を広げようと挑戦する同行が、Zoom Phoneを選んだ背景を聞きました。



(写真左から)リテール法人推進部営業開発チーム 部長代理 市川新之助氏、法人営業第五オフィス第三ライン 部長代理 木村遼平氏、法人営業第五オフィス第二ライン 細田百花氏、法人営業第五オフィス第三ライン 部長代理 山崎友紀氏、リテール法人推進部営業開発チーム 部長代理 福島郁海氏

リモート完結型の法人営業組織が直面した課題

電話やメール、Web面談を中心に、中小企業向けの営業活動やサポートをオンラインで完結させる——。みずほ銀行が新たなコンセプトのリモート法人営業組織を立ち上げたのは、2019年のことでした。

 

コロナ禍を経て一般的になったリモート対応を標準として新たな顧客ニーズに応えること、全国の支店の統廃合が進む中でもコミュニケーションを取れる体制を整えていくことなど、次世代の金融機関に求められる新たな営業スタイルを確立しようとしています。

 

東京・大阪・名古屋・福岡の4拠点で全国の顧客をカバー。日々の銀行取引に関するご照会から、資金調達のご相談、ビジネスマッチングや事業承継対策といった経営課題の解決まで、インサイドセールス中心にお客様のご要望に幅広く対応しつつ、みずほ銀行の他の法人営業拠点と同様にソリューション提案にも取り組んでいます。

 

新たな形の営業組織として同行の中でも今後への期待は高く、新設部署ながら部署全体で400人前後、うち営業に従事するメンバーは約300人の規模に成長しています(2025年12月現在)。訪問ではなくリモート対応が中心であることから、一人の担当者が抱える顧客も多く、それぞれ数百社と継続的に向き合い続けています。

 

「カスタマーサポートも含め、インバウンドの問い合わせ対応からアウトバウンドまで幅広く担う、いわば『フィールドセールスとインサイドセールスのリモートハイブリッド』ともいえる組織です。この規模でリモート法人営業を展開している金融機関はほとんどなく、さらなる成長に向けて力を入れているところです」(リテール法人推進部営業開発チーム 部長代理 市川新之助氏)

 

この組織では、顧客とのコミュニケーション全体の大半を電話が占めています。顧客にとって「すぐに連絡が取れる」ことの価値は高く、打ち合わせを都度セットするより「電話で機動的に対応できること」がより重視されています。

 

従来は通信キャリアの携帯電話で対応していましたが、運用管理上の課題がありました。顧客との通話内容を手書きのメモで記録し、それを整理して活動記録を作成する必要があり、この作業が大きな負担になっていたのです。

 

「電話が立て続けにかかってくると、どのお客様と何を話したかを後で膨大なメモを見ながら整理しなければなりません。1つずつの記録に必要な時間は数分とはいえ、毎日数十件は通話します。全体で見るとかなりの時間を要していました」(法人営業第五オフィス第三ライン 部長代理 山崎友紀氏)

 

さらに、現場が苦労して作成した活動記録が、よりよいサービスづくりに生かせていなかったという課題もありました。電話は必然的に1対1のやり取りになるため、管理者や他のメンバーが内容を参照できず、結果として“ブラックボックス化”していたのです。

 

「顧客の要望をヒアリングし、提案し、クロージングするところまで電話で完結させることを前提としているからこそ、電話でのやり取りを正確に保管し、後から有効活用していくことが極めて重要。ですが、これまではその情報をうまく活用できていませんでした」(リテール法人推進部営業開発チーム 部長代理 福島郁海氏)

 

「通話メモ作成の負担を軽減すること」と「顧客のやり取りを後から使える形で残すこと」——この2つが、クラウドPBX検討の出発点でした。

機能面、セキュリティ面、コスト面いずれも高評価

同部署は立ち上げ当初から、全員が社用スマートフォンで顧客対応する形で運用してきました。新たなPBXを導入する場合、スマートフォン上で「従来の電話に近い感覚で使えること」が必須条件になります。

 

その点、Zoom Phoneのユーザー側の準備はスマートフォンにアプリを入れるだけで完了します。音質も従来の電話回線と遜色ない上に、操作も分かりやすく、リプレイスの負担が少ない選択肢だったのが大きいと市川氏は検討の過程を振り返ります。

 

そして、最も重要な課題は通話記録のデータ化とその活用。セールストークの詳細な解析は別のツールを使用することがすでに決まっていたので、連携のしやすさも焦点でした。

 

Zoom Phoneで通話した音声データはクラウド上に自動保存(※設定で変更可能)され、文字起こしと要約が自動で行われます。機密情報も多く扱う金融機関だからこそ、セキュリティ面も重視されますが、Zoom MeetingsやZoom PhoneをはじめとしたZoom製品はISMAP(日本政府が求めるセキュリティ基準)を取得しており、すでに多くの大手企業で導入実績があるのもポジティブな評価でした。

 

API連携に対応している他社ツールも豊富で、自社で使用している既存の業務ツールとの連携がしやすいのも大きなメリットだったといいます。

 

「通話内容解析システムとのAPI連携が可能である点は、採用時のポイントになりました。今後のさらなる運用を考えても、ZoomのAPI連携の幅広さは心強いです」(市川氏)

 

機能面だけでなく、コスト面も決め手に。同行が採用したエンタープライズ向けのプランは、通話料が固定(定額のライセンス料に含まれ、通話時間に応じた追加費用はなし)かつ、音声データのクラウド保管料も容量無制限で無料です。

 

ソリューション選びの観点では、顧客側のニーズも無視できませんでした。同行は標準ツールとして全社的にMicrosoft Teamsを使用していますが、リモート法人営業オフィスが担当する中小企業や個人事業主の顧客の間ではZoom Meetingsの利用が比較的多く「Zoomは使えないのか?」という要望は以前から多かったと市川氏は話します。

 

Zoom Phoneの導入と合わせ、Zoom MeetingsによるWeb会議も自社がホスト側になって開催できるようになり、顧客の利便性向上にもつながりました。Zoom Meetingsの通話内容もクラウド上に保存され、管理も一元化できました。

1年にわたる行内調整を経て

2024年夏、まずはトライアルで導入し、現場からも好感触を得ます。すぐに本格導入を検討し始めたものの、既存の標準ツールと併用になる上に、クラウドPBXの導入も初めてだったため「なぜ、Zoom“も”必要なのか? を丁寧に行内説明することに力を入れました」(市川氏)。

 

「『我々のお客様はZoomの利用が多い』というデータを集めて説明したり、『従来の携帯電話と違って文字起こしができる』『業務効率化につながる』『音質もクリアでこれまでと遜色ない』と一つ一つ説明したり。約1年を費やして説明を重ねました」(市川氏)

 

こうした調整と説得の役割を担ったのが、市川氏を中心とする営業開発チーム。2019年にリモート法人営業オフィスの前身であるエンゲージメントオフィスが新設された初期から営業メンバーたちと並走しており、現場の意見を聞きながら、共に新しい営業スタイルを確立すべく議論してきました。

 

現場や顧客のニーズとテクニカルな課題、両方を深く知るからこそ、現場が本当に必要としているDX環境を築ける——みずほ銀行の先進的な挑戦はそんな“ワンチーム”で実現したのでした。

1時間の作業が20分に データがもたらした劇的な効率化

2025年8月、リモート法人営業担当者や営業開発チームを含む計300ライセンスでZoom Phoneが本格導入されました。すぐに目に見えて生じた大きな成果は、活動記録作成の劇的な効率化です。

 

これまで電話が終わるたびにメモを整理し、記憶をたどりながら活動記録を作成していた営業の現場では、Zoom Phoneの導入により時系列で自動文字起こしのデータが残るように。「どの顧客と何を話したか」をテキストデータで確認しながら記録できるようになりました。結果として、これまで1日あたり1時間程度はかかっていた作業が20分、場合によっては10分にまで短縮されたといいます。

 

「空いた時間を事務作業や稟議など別の業務に使えるようになったので、仕事の効率が大幅に上がりました。元のやり方には絶対に戻りたくない、と断言してしまうくらい、日々助けられています」(法人営業第五オフィス第二ライン 細田百花氏)

 

効果は時間短縮だけではありません。振り返る際にも「目安になる文字起こしデータ」がある安心感が生まれたことで、電話中に細かいメモを取る必要がなくなりました。顧客との会話に集中できるようになり、クオリティの向上や心理的負担の軽減にもつながっています。

 

「お客様とのやり取りに集中できることで、情報の取捨選択や会話の質に意識を向けられるようになったという声も上がっています。リモート営業の生産性の本質にかかわる大きな一歩だと感じます」(福島氏)

 

チーム運営の面で、マネージャーにも変化がありました。従来はチームメンバーの毎日の実績として、書かれた件数と内容しか見えず、その裏側にある「通じなかった電話」や「折り返しで受電した追加対応」「記録に残すほどでもなかったやり取り」などは可視化されていませんでした。

 

しかし、Zoom Phoneの導入によって発信・受信の回数や通話時間がリアルタイムに可視化され、個々の行動量が数字で見えるようになりました。現場にとっても管理者にとっても、業務内容を共有する上で納得感が生まれたといいます。

 

「たまたま長時間対応が必要なものが重なったり、立て続けに電話に出てもらえなかったり、記録上では同じ5件と記載されていても実態はさまざま。数字の裏に、数字には残っていない多くの行動があることも少なくありません。お互いの業務量について、より納得感を持って理解することができるようになりました」(法人営業第五オフィス第三ライン 部長代理 木村遼平氏)

 

 

文字起こしの自動化によって、活動記録の「質」が揃うメリットも生まれています。通話メモの精度や粒度は各自に委ねられていたため、人によって多忙時は「担保交渉」「融資の相談」などほんの一言になることもあったといいます。

 

自動要約と文字起こしをベースにすることで、「課題は何だったのか」「次のアクションは何か」までをテンプレートとして報告が上がってくるようになり、上司が状況を把握しやすくなりました。導入時の期待通り、通話内容の可視化が「次の打ち手を生む情報」として機能し始めています。

 

運用面では、管理の効率化も進みました。不審な電話や営業電話などをZoom Phoneの管理画面から一括でブロックできるようになり、各自が個別設定する手間が省けました。管理側としても、アップデートに伴う追加機能の付与などの一元管理がしやすくなり、ユーザーが新機能を迷わず利用できる体制が構築できていると変化を語ります。

目指すのは「営業に専念できる状態」 さらなる自動化を目指して

現状、音声データの活用は日々の活動記録作成が中心で、蓄積したデータをどう使い広げていくかは「これからの課題」だと市川氏は話しますが、方向性は明確です。

 

「目指すのは、営業担当者たちが事務作業に足を取られず『お客様とのコミュニケーションに専念できる状態』をつくることです」(市川氏)

 

例えば、契約書作成に必要な事項を会話のやり取りの中から自動で抽出し、チェックシートに自動入力する仕組みなどを検討しています。慣習的に契約や融資にあたって多くの書類が必要になる金融機関だからこそ、顧客と担当者の作業負担を軽減し「リモート営業だからこそのメリット」を広げていきたいと考えています。

 

「その後の事務が重いがゆえに、新規契約を尻込みしてしまう……なんてことがあったら本末転倒です。より多くのお客様に金融機関としての本質的な価値を届けるために、音声データの整備と活用を本格的に推進していきたい」(市川氏)

 

他にも、「顧客から受電した際の一次受付をAIが担い、必要な情報をヒアリング・整理した上で人につなぐ」「電話番号と顧客情報をひもづけ、通話内容の要約がSalesforceに自動入力されるようにする」など、Zoom Phoneが集める音声データを活用できそうなアイデアはさまざま。現場の営業スタッフとも対話しながら、活用を進めていきたいと語ります。

 

小さく始めて効果を出しやすいZoom Phone

「電話は誰もが使い、効果を体感しやすい基礎インフラです。使いこなすまでに時間がかかる営業支援ツールなどに比べて社員が効果を実感しやすい。運用・実装面でも機能を高度化しやすく、小さく始められるので、初期投資も少なくて済みます。金融機関に限らず、多くの企業で活用できると思います」(市川氏)

 

市川氏はZoom Phoneを導入した実感について改めてこう話します。

「リモート法人営業オフィスには、さまざまな企業、部門から社員が集まっており、まさに暗黙知の宝庫。『この情報はお客様の役に立つ』『こんなセールストークが契約につながる』といったナレッジがこれまでもたくさんあったはずですが、なかなか共有される機会がありませんでした」(福島氏)

 

ブラックボックス化していた通話内容が可視化されることで、個々の社員が持つ「暗黙知」が、皆で共有できる「組織知」となる——福島氏はそんな副次的な意義も強く感じていると言います。

 

「トップ営業はどんな会話をしているか、難しい商談はどんな順序で進めていくべきかといった参考事例が、Zoom Phoneを通じてアーカイブされ、誰でも参照できるようになったことが、チーム全体の力を向上させる推進力になっていると感じます。組織を強くすることに課題感を持つ企業には、汎用的に役立つのではないでしょうか」(福島氏)

 

行内でも同部署の取り組みに注目している人は多く「導入してどうか?」と質問されることが少なくないそうです。

 

次世代の金融機関に求められる価値を見つめ、アップデートを続けるみずほ銀行のリモート法人営業組織。Zoom Phoneで得られるデータを糧に、営業現場と開発部隊の二人三脚でこれからも挑戦を続けていきます。

 

 

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