10万回超の面談をAIが分析 データドリブンで「生産性向上」と「育成強化」を実現

年間10万回以上の顧客との面談データをAIが分析。Zoomソリューションで解析・活用し、コスト削減と人材育成を実現

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設立:

2013年

業界:

不動産

課題:

年間10万件以上のオンライン面談を実施する中で、進行の仕方に営業ごとにスタイルがあり、顧客満足度や提案の精度にばらつきが。手作業でメモを共有する時間的な負担も大きかった。業務拡大のなか、経験や勘に頼らない人材育成とセールスイネーブルメントが急務に。

導入成果:

Zoom MeetingsとZRAを併用することで、日々の面談内容が自動で要約され、議事録作成やCRM入力のコストが大幅減。成約に至るキーとなる各要素が言語化・点数化され、より客観的な指導が可能に。ZRAを活用して改善を続けた人は、そうでない人と比較して月間売上高が120%に達した。

導入ソリューション

紙の契約書に印鑑を押し、ファックスでやり取りを行う──50兆円規模とされる不動産市場は、今なおアナログな商慣習が根強く残っています。

 

そんな不動産の世界に変革を起こすべく、「テクノロジー×イノベーションで驚きと感動を生み、世界を前進させる」という企業理念を掲げるGA technologiesは、不動産をはじめ、テクノロジーでさまざまな産業のビジネス変革を推進。累計会員数54万人超(2025年3月時点)のAI不動産投資サービス「RENOSY(リノシー)」を主力事業とし、創業から12年で従業員数1500名を超える企業にまで成長しています。

 

さらなる進化を目指す同社は、RENOSY事業にZoomソリューションを導入。AIで面談の会話を分析する「Zoom Revenue Accelerator」を活用し、わずか数か月で「営業現場の大幅なコスト削減」と「再現性のある営業の育成」で成果を上げつつあります。AIをパートナーに選んだ成長企業は、営業現場の課題をどのように解決しているのか。その鍵となるAIによる営業データ活用に迫ります。

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年間10万回超の会話データを“資産”に

RENOSYは、購入・管理・売却をワンストップで提供しているAI不動産投資サービスです。不動産での資産形成をより身近にし、運用対効果を最大化することを目指しています。顧客に寄り添い並走するのが、Asset Planner(アセットプランナー)と呼ばれる営業担当者たちです。

 

不動産投資は高額な商品のため、申し込みまで複数回の面談を行います。必然的に顧客と接する機会が多くなり、電話やオンライン面談を合わせると、その数は年間10万回以上。この大量に蓄積される顧客とアセットプランナーの面談中の会話データこそ、「事業を成長させるための貴重な資産」と語るのは、テクノロジーインキュベーション室 室長 テクノロジー全社横断担当の由井利明 執行役員です。

 

どうしても属人的になってしまいがちな面談。貴重な「会話データ」を十分に活かしきれていなかったのが、これまでのRENOSY事業の課題でした。まず、顧客との連絡手段が統一されておらず、社用携帯で電話する担当者もいれば、通話アプリを利用する人も。各自で面談の議事録や録画データを残してはいたものの、分析の仕組みが整っていないため、せっかくの会話情報が「ブラックボックス化」していたといいます。

 

また、会話データが活用されないと、知見の蓄積や共有が進みません。組織内にはアセットプランナーの育成を担うセールスイネーブルメントの専門チームがあるとはいえ、すべての面談内容を確認、評価するには膨大な工数が必要です。そのため、アセットプランナーは「このお客様には、なんとなくこの物件が合っていそう」といった自身の経験や感覚に頼った提案を行う状況に。その結果、「提案の質にばらつきが生じるだけでなく、アセットプランナーとの相性が顧客満足度に影響していた」と由井氏は振り返ります。

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「お客様の資産状況によって最適な商品は当然異なります。現状を伺ったうえで、リスクなどの知りたいことに的確に応え、伝えるべき情報を確実に伝える。個々のニーズに応じた説明や提案を徹底して行える体制づくりが急務でした」

 

膨大な時間と量の会話データを自動で分析し、顧客満足度の向上や業務の効率化につなげたい。さらにデータを育成に活かし、セールスイネーブルメントも強化したい。こうした目的のもと、営業ツールのリプレイスを検討するなかで着目したのが、Zoomのソリューションでした。

高精度の文字起こしがデータ活用の礎

約3か月のトライアルを経て、2024年8月より本格導入を開始。電話はZoom Phone、面談はZoom Meetingsで一元管理し、顧客とのすべてのコミュニケーションをZoomのプラットフォームに集約しました。さらにZoom Revenue Accelerator(以下、ZRA)の機能を追加し、面談内容の解析に取り組み始めます。

 

「Zoomへのリプレイスを決めたのは、アセットプランナーがお客様一人ひとりとじっくり向き合う時間を確保するため」と強調するのは、RENOSYの営業現場に近い立場でテクノロジー活用を統括する、RENOSY Asset Planner Tech Center 室長の福島晨氏です。

 

GA Tech

 

 福島氏は、Zoomのメリットを営業現場にいち早く実感してもらうため、テキスト化された顧客との会話データを外部のAIツールで要約・編集し、ビジネスチャットに自動送信する機能をすぐに実装。面談終了後まもなく整理された議事録や的確な要約が届く様子に、アセットプランナーからは驚きの声が上がったといいます。

 

「Zoom導入前は、お客様と話した内容の概要をアセットプランナーがCRMに手入力していました。1回の面談は1時間〜1時間半に及ぶため、入力のばらつきや精度、それに伴う業務負担の大きさも課題でした。Zoomの文字起こし機能は精度が抜群に高いので整え直す手間がなく、その後のデータ活用が非常にスムーズです。また、会話で気になった箇所にコメントを残せるので、振り返りもしやすい。議事録には動画リンクがあり、該当部分の音声もすぐに確認できます」

さらに福島氏は、「社内システムとのAPI連携のしやすさも、Zoom導入を後押しした」と語ります。エンジニア組織を持つ同社では、営業活動で活用するCRMとして自社開発したものを使用しており、仕入れや管理の領域でも一部内製ツールが存在します。ZoomはAPIを公開しているため、他の自社ツールや外部アプリとも柔軟に連携が可能。「事業の成長に応じてシステムを拡張しやすい点も重要なポイントだった」といいます。

年間数千万円規模のコスト削減 営業の心理的負担も軽減

Zoomソリューション導入後、面談データの蓄積と活用が可能になり、導入して数か月で成果を実感。売上増にダイレクトにつなげられそうな手応えも感じています。福島氏は、具体的な効果として次の2点を挙げます。

 

「1つは、年間10万回以上の会話データの自動テキスト化により、メモや議事録作成の時間を大幅に短縮できた点です。情報整理と入力に1件あたり少なく見積もっても5〜10分かかっていた作業がほぼゼロになり、年間で数千万円規模のコスト削減が実現しました」

 

面談中のメモ取り作業が減り、アセットプランナーは目の前の会話に集中できるようになっただけでなく、心理的な負担も軽減されたといいます。

 

「通常、新規問い合わせに対しては、まずインサイドセールス担当が電話でヒアリングを行い、アポイント調整後にフィールドセールスへ引き継ぎます。その際、お客様の情報が正確でないと、次の連絡時に話が噛み合わないことも。過去には情報伝達が不十分で、フィールドセールスが事前に面談内容を聞き直す必要があり、キャッチアップだけで1時間かかるケースもありました」

 

お客様のニーズに応えるために情報を正確に残したい——その意識がアセットプランナーにとって大きなプレッシャーになっていたのです。

 

新システム導入の旗振り役として、ただ新しいものを取り入れるだけでなく、「現場の心理的負担を軽くすることも大事」と語る福島氏。アセットプランナーのイネーブルメント担当者の近くに席を置き、現場の課題を理解しようと連携した結果が、2つ目の成果であるZRAを活用した成約率向上につながっていきました。

生成AIと組み合わせてイネーブルメントに活用、サービスを磨き込む

Zoom上でなされた会話データをテキスト化するだけでなく、独自AIによる分析を加えることで、面談内容の詳細な分析や改善点など具体的なアドバイスにまで踏み込んで活用できるのがZRAの大きな特徴です。

 

「1人あたりの月間売上高を指標として、同じ期間内でデータを活用した人とそうでない人を比べたところ、活用したアセットプランナーの方がそうでない人の約120%という成果を示しました。今後にかなり期待ができる数字です」

ZRA

そう話す福島氏は、「これまで、アセットプランナーが顧客に対してどの程度適切に説明できているかを定量的に測る手段がなかった」と振り返ります。

 

ZRAを最大限活かすため、「この項目に沿って会話データの内容をこのように整理、評価して」と生成AIに指示する独自プロンプトを社内で丁寧に設計。「傾聴力」「提案力」など、具体的な指標と基準に基づいたフィードバックが自動的に提供され、数字で評価される仕組みを構築しました。

 

このプロセスにおいて、最も重要だったのは、面談で重要な営業プロセスや顧客対応のポイントを示す「キーアクション」の設定です。例えば、初回の面談では特定の規約に沿った情報提供が求められるため、明確にわかりやすく説明できていたかを評価する項目を設けました。面談が終わると、例えば「資産運用の必要性をしっかり訴求できていたか」という項目では、「5点満点中5点。特にインフレについての解説がわかりやすかった」といった具体的な評価と理由が、面談終了後に議事録とともに自動送信されます。

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この仕組みにより、アセットプランナーは面談の内容を効率的に振り返り、今回の会話のよかったところ、悪かったところ、自分では気づきにくい無意識のクセなどを客観的に知り、その学びを即座に活かせます。「自身の課題を特定し、強化すべき内容を理解することがポイントだった」と語る福島氏。CRMにもデータが蓄積されるため、個々の課題や弱点が正確に可視化されるのも大きなメリットで、人材育成という面でも、成約率向上に向けた効果的なトレーニングが可能になったといいます。

 

「『もう少し頑張ろう』などの抽象的なフィードバックではなく、データに基づく根拠を示しながら指導できるので、アセットプランナーも納得して改善に取り組めます。評価基準の統一により指導者ごとのばらつきを抑えられ、公平な評価も可能になったと感じます。また、キーアクションに加え、会話力や要約力などの評価軸も設けたことで、お客様とのコミュニケーションで強化すべき点がより明確になりました」

 

ZRAを使うことによって、顧客側の要望や期待も、より的確に把握できるように。「面談の過程では、お客様の感情の変化や意思決定プロセスの把握が重要。会話データをサービスの磨き込みや面談フローの改善に活用していきたい」と福島氏は今後の展望を語ります。

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「便利なツールの導入」はゴールではない

ZRAが現場に浸透するにつれ、アセットプランナーの間ではAIの活用や業務の効率化に対する意識が総じて高まっているそうです。営業プロセスの一元管理、会話データの高度な活用、CRM連携による生産性向上と育成など、Zoomソリューションの多方面のメリットを実感する一方で、「さらなる顧客体験向上には継続的なチューニングが不可欠」と福島氏は付け加えます。

 

「ツールを導入しただけでは定着せず、やがて使われなくなります。現場と密にコミュニケーションを取り、業務での活用状況や生まれる成果を確認しながら、改善を重ねることが重要だと考えています」

GAT

イネーブルメントにおいては、提案力や会話力などの評価基準を随時見直し、PDCAサイクルを回しながら改善が進められています。プロンプトで指示するため、評価基準の変更もスムーズに行え、柔軟なチューニングが可能です。他事業部やグループ会社も集まる全社ミーティングでこのZoomとAIを活用した取り組みを紹介したところ、「自分たちも使いたい」との問い合わせが相次いだといいます。「営業組織に限らず、マーケティングなどさまざまな業務オペレーションの領域でも活用できる可能性があるのでは」と由井氏は展望を語ります。

 

 社会全体で営業支援における生成AI活用が関心を集めるなか、由井氏はRENOSY事業で成果を出せたポイントを次のように振り返ります。

 

 「期待する効果を我々の中でどう定義し、共有し、言語化するかが一番の鍵です。注意すべきは、経営層や事業責任者が得たい効果と、現場が求める効果が必ずしも一致しないこと。経営層が『この効果があるから投資すべきだ』と判断しても、現場にはその価値が伝わりにくいケースはよくあります。双方が求める効果を明確にし、共有できたことで、納得感を持って変革を進められたと感じます。今後もテクノロジーを活用したサービス提供の可能性を追求し、Zoomが引き続き重要な役割を果たしてくれることに期待しています」

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