積水化学は1947年に設立され、住宅や社会インフラの創出、化学ソリューション分野で製品とサービスを提供してきました。積水化学は、住宅カンパニー、都市インフラ・環境製品カンパニー、高機能プラスチックカンパニーの3つの主要カンパニーに加え、医療事業および本社機能を通じて事業を展開しています。
2018年、同社のグローバル売上の70%以上を占める「高機能プラスチックカンパニー」が、国際的なコミュニケーション強化の一環としてZoomや他のクラウドサービスの活用を提案しました。その結果、同部門は2018年11月にZoomの導入を開始しました。
そして2020年初頭、利用者数の増加を背景に、積水化学はZoomの全社導入を検討し始めました。「当時、利用を希望する社員が手を挙げて『高機能プラスチックカンパニー』に使用申請をしていました」と谷直弘氏(デジタルトランスフォーメーション推進部、情報システムグループ)は語ります。
「しかし同年4月、新型コロナウイルスウイルスの影響と初の緊急事態宣言により、ウェブカンファレンスの利用が急増し、各部署やグループ会社でZoomの個別契約が相次ぎました。」一方、それまで使用していた社内テレビ会議システムは、カンファレンスルームに設置された据え置き型端末が主流で、その利用は次第に減少していきました。
軽くて、簡単で、瞬時に
積水化学は当初、グローバルコミュニケーションの強化と働き方改革の一環としてウェブカンファレンスの全社導入を検討していましたが、新型コロナウイルスのパンデミックを受け、テレワークに不可欠な基盤として再評価されました。これを受け、ツールの「使いやすさ」と「わかりやすさ」が最優先事項となりました。
「グループ会社にはITに不慣れなメンバーも多いため、申請や設定が必要なアプリケーションは使いづらいと考えました」と谷氏は話します。
「パンデミック前に使っていたカンファレンスルーム型のテレビ会議システムは、管理者が設定を行っていたため、ユーザーはカンファレンスルームに行ってボタンを押すだけで利用できました。しかし、テレワークではユーザー自身が設定を行う必要がありました。このような状況では、ツールが直感的で誰でも簡単に扱えることが重要です。PCの仕様は統一されているものの、処理能力が求められるツールは旧型PCでは動作が不安定になる可能性もあります。軽量で、操作が簡単、かつすぐに使えるツールであることが私たちの要件でした」と原和也氏(デジタルトランスフォーメーション推進部、ゼネラルマネージャー)は話します。また、グループウェアとの互換性も導入の重要なポイントでした。
「当社では、Smileというコミュニケーションプラットフォームを活用しており、メール、スケジュール管理、チャット、ドキュメント管理を一括で対応しています。他社ではウェブカンファレンスツールとコミュニケーション機能が一体化されていますが、当社ではすでにコミュニケーションツールはSmileに統一していたため、ウェブカンファレンス機能を補うツールが必要でした。」
さらに重要な要件として、相互運用性が挙げられ、PCだけでなく、iOSやAndroidのスマートフォンにも対応している必要がありました。経営幹部や社外取締役にはiPadを支給しています。また、住宅カンパニーの営業スタッフは個人情報を扱うためPCを社外に持ち出せず、データ保護の観点からセキュリティ強化されたタブレットを使用しています。これらすべての従業員が、ストレスなくツールを利用できることが求められていました。
Zoomのセキュリティについて、谷氏は次のように述べました。「かつてZoomの脆弱性がメディアで強く報道され、グループ会社や取引先からも懸念の声が上がった時期がありました。しかし私たちはそうした報道を鵜呑みにせず、当時Zoomが掲げていたセキュリティ最優先という方針を評価し、継続利用を決断しました。また、報告されたセキュリティ事象の多くが、ユーザーの利用方法や企業側の管理、運用に起因するものであることを、社内でも共有しました。」
原氏は次のように語ります。「当時、Zoomは機能強化よりもセキュリティを優先するという経営方針を打ち出しました。利便性と安全性は常にトレードオフの関係にあるため、この姿勢は非常に重要だと感じています。セキュリティにリソースを投入することを明言した点は、とても評価できます。」
その結果、積水化学は2021年4月にZoom MeetingsとZoom Webinarsのライセンスを27,000件導入し、段階的な全社展開を開始しました。
営業とマーケティングを加速させるツール群
積水化学は、複雑な企業インフラや認証基盤にも対応するエンタープライズグレードの機能を備えたZoomプラットフォームを導入しました。「ライセンス契約の範囲内であっても、Zoomの技術およびサポートチームは、機能の活用に向けて積極的な提案と手厚い支援を提供してくれました。ソフトウェアの購入はゴールではありません。認証基盤の各レベルごとにZoom環境(サブアカウント)を構築し、将来的にはそれらの認証基盤とZoom環境を統合、連携する必要があります。そのために、ZoomのSE(システムエンジニア)がサポートに入り、移行に向けたロードマップの策定を包括的に支援してくれており、非常に助かっています」と谷氏は話します。
全社導入以降、Zoomはテレワークにおける「日々の業務の基盤」として定着しています。Zoomは、社内のESG関連セミナーや人材採用など、企業レベルの取り組みにも活用されています。また、プラスチックスカンパニー(都市インフラ・環境製品会社や高性能プラスチック会社)では、ウェビナーの開催にもZoomを活用しています。「Zoomは、Web経由での集客といった戦略を含め、当社の営業、マーケティングの拡大に大きく貢献しています」と原氏は話します。
以前は、住宅カンパニーの営業スタッフが顧客を訪問し、間取りや内外装のデザインについて打ち合わせた後、オフィスに戻って設計担当と、デザインの実現可能性や規制への適合について協議していました。原氏は次のように述べています。「Zoomを使えば、顧客先で設計担当とリアルタイムに規制や仕様の確認ができるため、大幅な時間短縮につながっています。その場でアドバイスを受けられるため、お客様にも非常に好評です。」
また、新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が出された地域では、原則として全社員の出社が禁止されています。「業務に支障をきたさないよう、多角的にテレワーク環境を整備しており、Zoomはその中でも特に効果的なツールのひとつです」と原氏は述べた上で、「他のカンファレンスシステムと比べて、Zoomの通信品質は圧倒的に優れています。通信量だけでなく、サウンドや音声の明瞭さなど、あらゆる面で優位性があります」と強調します。「他のシステムと比べて、Zoomの通信品質は圧倒的に優れており、通信量だけでなく、サウンドや音声の明瞭さなど、あらゆる面で優位性があります。」
生産性の向上
「社内でのZoom活用が広がる中で、部門やグループごとにセキュリティ設定や機能制限をどう管理するか、使用量に応じた会社別の課金をどう仕組化するかといった課題が出てきています。「また、今後ニューノーマルの段階に入った際には、テレワークが完全になくなることはないものの、現在ほど一般的ではなくなると考えています。そのため、Zoomの利用率がどのように変動するかは予測が難しい状況です」「さらに、ハイブリッドミーティングを実施する際には、カメラやマイク、スピーカーなどの使い方についても最適な運用方法を模索する必要があります」と原氏は補足します。
積水化学では、Zoomがリモートワークの促進とワークライフバランスの向上に大きく寄与しています。原氏は次のように述べます。「従業員一人ひとりの働く環境は大きく異なります。テレワークによって、子育てや介護などに時間を充てながら、仕事との両立を図ることができ、ワークライフバランスの向上にもつながります。今後は、ミーティングのあり方も変わっていくと考えています。単なる報告が中心のミーティングはカンファレンスルームではなくウェブカンファレンスで行われ、各人の生産性を最大限に引き出すスタイルが主流になるでしょう。もちろん、意見交換や議論が必要な場面では、今後も対面での会議が続くと見ています。Zoomのようなツールを活用することで、オフィスワーカーの生産性向上という長年の課題を解決できることを期待しています。」