「おにぎりせんべい」工場を支えるのはZoom プラットフォーム 地域密着企業が目指す、人にやさしいDX

Zoom Phone導入で製造業の現場を効率化――中小企業が成す「足元のデジタル化」の可能性

Mashuya Group
設立 :

1965年

本社所在地 :

三重県伊勢市小俣町相合1306

業界:

食品

導入ソリューション:

Zoom Meetings、Zoom Phone

課題:

従来のPBXの老朽化によりクラウドPBXの導入を検討。初期投資やランニングコストを抑えつつ、従業員によって使い勝手のいい新たなデジタルツールとしたい。

導入成果:

ノイズの多い食品工場内で利用できる音質の高さが好評。PHSからスマホに代わり、写真や動画の活用で業務も効率化した。個人宛の通話に社外でも対応でき、オフィスワーカーの従業員にもメリット。投資を抑えつつ、月々の電話代や外部委託費のコストも減。

幅広い世代に愛される「おにぎりせんべい」でお馴染みのマスヤをはじめ、8つの事業会社を束ねるIXホールディングス(三重県)では、Zoom Meetings、Zoom Phoneを活用してグループ内外のコミュニケーション環境をアップデートしてきました。 地域に根ざした中小企業が、積極的に業務改善に取り組む理由とは? 従業員の要望を汲み取って進める「人にやさしいDX」の過程を聞きました。

 

新型コロナショックに先駆けて 2019年にZoom Meetingsを導入

 

三重県伊勢市、田畑が広がるのどかな風景の中に、ひときわ目立つ「おにぎりせんべい」のイラスト。ここは老若男女に高い知名度を誇るおにぎりせんべいのメーカー、株式会社マスヤの本社工場です。

1965年創業のマスヤを含め、酒造や観光、旅館、ブライダル、介護など、8社の事業会社を束ねるのが、IXホールディングスです。

伊勢志摩の「I」、Transformationを意味する「X」を社名に冠する同社は、「伊勢志摩の変革の一翼を担う」べく、グループ全体で業務のデジタル化に取り組んでいます。

 

グループCIO兼デジタル事業本部長を務める神山大輔氏は、2019年に着任。生まれ育った三重の発展に貢献したい気持ちで、都内外資IT企業からのUターン転職を決めたと言います。

「伊勢志摩のグループ企業と言っても、遠いところは車で1時間以上の距離があります。三重県という立地上、都心部の取引先とも離れているため、グループ内外のコミュニケーション基盤をいかにつくるかが課題でした」と当時を振り返ります。

 

神山氏がまず取り組んだのはオンラインミーティングとチャットの導入。結果的には、2020年の新型コロナウイルスによるテレワーク拡大を前に導入が完了しており、避けられないワークスタイルの変化にもいち早く対応できたと言います。

「Zoom Meetingsは音質もよく、UIもわかりやすい。最初は慣れないアプリに尻込みする社員もいましたが、便利さと使いやすさであっというまに浸透しました。多くの企業と同じく、今ではすっかり業務に欠かせないツールになっています」

そして2021年10月、Zoom Phoneの導入によって、IXホールディングスのDXはさらに一歩進みます。

 

「壊れたら終わり」の不安な日々 老朽化したPBXをZoom Phoneに刷新

 

グループの中核をなすマスヤでは、20年近くPBX(Private Branch Exchange)として構内PHSを利用してきました。

食品工場は、衛生管理の観点から入退室に一定の手順を踏む必要があります。軽い打ち合わせのために内外を行き来するのは負担が大きく、社員間の内線電話は頻繁に使われています。

 

一方で、構内PHSの電話交換機は老朽化が進んでおり、修理には数百万円のコストがかかると判明。PHS端末そのものの通話品質も低下しており、今後の選択が迫られていました。

「交換機は毎月のメンテナンスにもコストがかかっていましたし、万が一壊れてしまえばもう古い部品は調達できないとも言われていました。責任者としては、雷が鳴るたびに『うちの交換機がやられていたらどうしよう……』と肝を冷やしていたものです(笑)」(神山さん)

 

さらに、スプリアス規定の改定によって、将来PHSが法的に使えなくなる可能性も。事態はさらに待ったなしの状態になりました。

交換機の更新にかかる投資を抑え、ランニングコストは維持する。かつ、より便利なPBX環境をつくりたい。

 そんな課題に向き合う同社が、2021年夏に着目したのが、Zoom Phoneでした。

「当初はZoomもサポートしているDECT Phone(Digital Enhanced Cordless Telecommunications=デジタルコードレス電話の通信方式の一種)の導入を検討していました。トライアルの問い合わせをしたところ、営業さんが東京からわざわざ足を運んでくれて。我々のような地方の小さな企業にも親身になって相談に乗ってくれたこと、さまざまな提案をしてくれたこともZoom Phone導入の決め手になりました」

 

結果的には、社員からスマートフォン導入の要望が強かったこともあり、DECT PhoneではなくWi-Fi方式を採用。2022年にIXホールディングス、2023年にマスヤでZoom Phoneの導入を開始しました。

 

生産現場の効率化:機械音が多い工場でも高音質で

 

工場内でのコミュニケーション手段も、PHSに代わりスマートフォンに。既存のZoomアプリに「電話」のボタンが増えるだけで、新たなアプリを入れる必要はなく、使い方が理解しやすいのもZoom Phoneのメリットです。マスヤで製造部門を統括する山本豊常務取締役は、導入の成果をこう語ります。

 

「おにぎりせんべいの生産ラインは生地、焼成、梱包の3工程に分かれているのですが、場所によっては壁があって前後が見通せないプロセスもあります。効率的に連携するために携帯電話は不可欠です」

 

「従来のPHSでは工場内の機械音を拾いすぎてしまい、うまく話せないこともありました。その点、Zoom Phoneはノイズキャンセリング機能がしっかりしていて、非常に話しやすくなった実感があります」

さらに山本氏が高く評価するのは、Zoom Phoneのユーザー管理機能。アカウントオーナーが各ユーザーに番号を割り当てることができ、変更や細かなグルーピングも可能です。現在はチームごとに番号を割り振っており、外部からの電話もチームごとに受けています。

 

「『グループコール ピックアップ』機能を使えば、はじめに職長、次はサブリーダーと、設定した順に着信コールを鳴らすこともできます。これによって特定の人に電話が集中し、対応に追われることもなくなりました」

 

番号の割り振りや、着信の順番設定も簡単にできるため、これまでは電話業者に依頼していた作業も自社で完結できるように。時間とコストはもちろん、管理上のストレスも大幅に軽減されたといいます。

 加えて、Zoom Phone導入の際にPHSからスマートフォンへと切り替えたことも、生産現場の効率化を推し進めました。

 「スマートフォン導入の一番の効果は、現場で起こったトラブルやイレギュラーな状況を、動画や写真で簡単に共有できるようになったこと。撮影データをSlackにアップし、瞬時にチームで共有できるようになりました」

 

社外とのやりとりも円滑に:いつでも、どこにいても通話可能に

 

社外とのコミュニケーションも、Zoom Phoneによって大きく改善されました。

 

IXホールディングスでコミュニティマネージャーを務める浮田美里氏は、伊勢志摩の活性化を目的に、学生を含む地域のステークホルダーとともにさまざまな課題解決に取り組んでいます。

 

そんな浮田氏は、社員の中でもオフィスの外で汗を流している時間が特に長い一人。外出中に会社にかかってきた電話への対応には、やや煩雑さを感じていたそうです。

 「以前は、自分宛ての電話は会社で受けてもらい、折り返しこちらからかけたり、再度お電話をいただいたりしていました。Zoom Phone導入後は私物のスマホにZoomアプリを入れ、外部からの電話を会社経由で転送することも、直接出ることもできるようになりました」

 

「いつでも、どこにいても仕事がやりやすくなったことは間違いありません。電話を折り返す、不在時に伝言を残すといった手間が減ったことは、会社全体にとっても良い変化だと思います」

 

外部とのやりとりの多い一部アカウントは無制限通話プランに加入。毎月の通話コストの見通しが立てやすくなるうえ、Wi-Fi環境下であれば、海外や遠方にいても通話料無料になることもZoom Phoneのメリットです。

 

神山さんも「先日、休みに韓国に旅行していたのですが、旅先で部下から電話があって。向こうはいつものように内線をかけただけですから、私が韓国にいるとは気づかなかったかもしれません」とニヤリ。

 各自が手元のスマホで外線をとれるようになったことで、自宅でテレワークをする社員と、社内にいる同僚のやりとりも格段に効率化されたといいます。

 

マルチツールとしての可能性:「Zoomってこんなこともできるんだ!」

 

通話やミーティングにとどまらないZoomの豊富な機能を評価するのは、神山氏とともにIXホールディングスのデジタル事業本部を支える湯浅隆帆氏です。

グループ内でのコミュニケーション、通信・PC関連などのサポート業務を担当する湯浅氏は、グループ内で最もZoomが提供するサービスに精通しているメンバーの一人です。

 

「Zoom Phoneは、内線であれば通話からMeetingsにそのまま移行できます。同僚と通話中に『この件は、声だけでなく資料や写真を見せながら説明したい』となったときに、サッと切り替えられるのは便利」

 

通話内容をレコーディングし、自動で文字起こしすることもできる(※オプション)ため、個別の通話内容の記録・共有も簡単になりました。

 

「面白い機能としては、3人の同時通話で使える『ウィスパリング』があります。“ささやき”の名の通り、通話メンバーのうち特定の人だけに話しかけられます。例えば、取引先とのハードな交渉の場に上司が同席し、相手方に悟られることなく、リアルタイムで部下にアドバイスする――なんてことができるんですよ」

 

「最近はAIに関連した新機能も増えていますし、『へえ、こんなこともできるんだ!』という発見が日々あるのはZoomの好きなところです」

 

グループ内のサポート業務においては、リモートコントロール機能が重宝するといいます。

 

「別拠点の社員から『システムでエラーが発生した』などといった相談が寄せられることもよくあるのですが、電話だけでは説明が難しく、直接PCを触ることも難しいですよね」

 

「Zoom Meetingsで相手とつなげば、リモートコントロールを用いて、相手の画面を見ながら指示したり、マウスやキーボードをこちらから動かしたりすることも可能です。全国各地の社員をすぐにサポートできて助かります」

異なる8つの事業会社に勤務する社員へのサポート業務が効率化し、外部業者に依頼するコスト削減にもつながったといいます。

 

「中小企業こそ、もっと便利にできる」

 

生産現場や社内外とのコミュニケーション、サポート業務の円滑化など、幅広い領域でZoomを活用するIXホールディングス。

 経済産業省認定の「DXセレクション2024」の優良事例に選ばれるなど、その取り組みは地方を拠点とする多くの企業のモデルになりそうです。

 

「私自身は、そんなにIT得意じゃないんだけどね」。柔らかい笑顔でそう話すIXホールディングスの浜田吉司代表取締役社長は、その言葉と裏腹に、先陣を切ってITへの理解を深めてきた張本人。

忙しい合間をぬって、年初には「ITパスポート」の資格も取得。会社全体のリテラシーを高めようと、社員の同資格取得をサポートする制度も整えました。

「DXが大事と言われても、地方の中小企業に数千万、何億もかけた最先端の投資をする体力は当然ありません。劇的な変化は難しくとも、今の業務フローを大きく変えずに、従業員の意見を聞きながら着実に変わっていくことは可能です」

 

「中小企業こそ、デジタルの活用でもっと便利に、もっと効率よくできる部分がまだまだある。そのやり方を、Zoomさんや全国の企業さんと、一緒に考えていきたいですね」

 

浜田社長のもと、デジタル施策をリードしてきた神山氏も謙虚にこう語ります。

「DXは本来的には業務プロセス、ビジネスそのものを抜本的に変えるほどの変革だと思います。正直、当社がそのレベルに達するには残念ながらまだまだ時間がかかる。まずは『足元のデジタル化』を進めながら、その先にあるDXを目指したいと思っています」

 

近年の同社の積極的な取り組みが地域に知られるようになり、地元企業からもDX化について問い合わせを受けることが増えたという神山氏。

 

「今後、9社目の事業会社として、そういったご相談に対応する会社をつくることを考えています。当社がやってきたことを皆さんに共有することで、地域全体の底上げに微力でも貢献できれば」

 

Zoomとともにさらなる成長・発展を目指す伊勢志摩発のDX戦略。その行方には、多くの地方企業、中小企業からの注目と期待が集まっています。

 


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