「当初はZoomもサポートしているDECT Phone(Digital Enhanced Cordless Telecommunications=デジタルコードレス電話の通信方式の一種)の導入を検討していました。トライアルの問い合わせをしたところ、営業さんが東京からわざわざ足を運んでくれて。我々のような地方の小さな企業にも親身になって相談に乗ってくれたこと、さまざまな提案をしてくれたこともZoom Phone導入の決め手になりました」
結果的には、社員からスマートフォン導入の要望が強かったこともあり、DECT PhoneではなくWi-Fi方式を採用。2022年にIXホールディングス、2023年にマスヤでZoom Phoneの導入を開始しました。
生産現場の効率化:機械音が多い工場でも高音質で
工場内でのコミュニケーション手段も、PHSに代わりスマートフォンに。既存のZoomアプリに「電話」のボタンが増えるだけで、新たなアプリを入れる必要はなく、使い方が理解しやすいのもZoom Phoneのメリットです。マスヤで製造部門を統括する山本豊常務取締役は、導入の成果をこう語ります。
「おにぎりせんべいの生産ラインは生地、焼成、梱包の3工程に分かれているのですが、場所によっては壁があって前後が見通せないプロセスもあります。効率的に連携するために携帯電話は不可欠です」
「従来のPHSでは工場内の機械音を拾いすぎてしまい、うまく話せないこともありました。その点、Zoom Phoneはノイズキャンセリング機能がしっかりしていて、非常に話しやすくなった実感があります」

さらに山本氏が高く評価するのは、Zoom Phoneのユーザー管理機能。アカウントオーナーが各ユーザーに番号を割り当てることができ、変更や細かなグルーピングも可能です。現在はチームごとに番号を割り振っており、外部からの電話もチームごとに受けています。
「『グループコール ピックアップ』機能を使えば、はじめに職長、次はサブリーダーと、設定した順に着信コールを鳴らすこともできます。これによって特定の人に電話が集中し、対応に追われることもなくなりました」
番号の割り振りや、着信の順番設定も簡単にできるため、これまでは電話業者に依頼していた作業も自社で完結できるように。時間とコストはもちろん、管理上のストレスも大幅に軽減されたといいます。
加えて、Zoom Phone導入の際にPHSからスマートフォンへと切り替えたことも、生産現場の効率化を推し進めました。
「スマートフォン導入の一番の効果は、現場で起こったトラブルやイレギュラーな状況を、動画や写真で簡単に共有できるようになったこと。撮影データをSlackにアップし、瞬時にチームで共有できるようになりました」
社外とのやりとりも円滑に:いつでも、どこにいても通話可能に
社外とのコミュニケーションも、Zoom Phoneによって大きく改善されました。
IXホールディングスでコミュニティマネージャーを務める浮田美里氏は、伊勢志摩の活性化を目的に、学生を含む地域のステークホルダーとともにさまざまな課題解決に取り組んでいます。
そんな浮田氏は、社員の中でもオフィスの外で汗を流している時間が特に長い一人。外出中に会社にかかってきた電話への対応には、やや煩雑さを感じていたそうです。
「以前は、自分宛ての電話は会社で受けてもらい、折り返しこちらからかけたり、再度お電話をいただいたりしていました。Zoom Phone導入後は私物のスマホにZoomアプリを入れ、外部からの電話を会社経由で転送することも、直接出ることもできるようになりました」
「いつでも、どこにいても仕事がやりやすくなったことは間違いありません。電話を折り返す、不在時に伝言を残すといった手間が減ったことは、会社全体にとっても良い変化だと思います」
外部とのやりとりの多い一部アカウントは無制限通話プランに加入。毎月の通話コストの見通しが立てやすくなるうえ、Wi-Fi環境下であれば、海外や遠方にいても通話料無料になることもZoom Phoneのメリットです。
神山さんも「先日、休みに韓国に旅行していたのですが、旅先で部下から電話があって。向こうはいつものように内線をかけただけですから、私が韓国にいるとは気づかなかったかもしれません」とニヤリ。
各自が手元のスマホで外線をとれるようになったことで、自宅でテレワークをする社員と、社内にいる同僚のやりとりも格段に効率化されたといいます。
マルチツールとしての可能性:「Zoomってこんなこともできるんだ!」
通話やミーティングにとどまらないZoomの豊富な機能を評価するのは、神山氏とともにIXホールディングスのデジタル事業本部を支える湯浅隆帆氏です。
グループ内でのコミュニケーション、通信・PC関連などのサポート業務を担当する湯浅氏は、グループ内で最もZoomが提供するサービスに精通しているメンバーの一人です。
「Zoom Phoneは、内線であれば通話からMeetingsにそのまま移行できます。同僚と通話中に『この件は、声だけでなく資料や写真を見せながら説明したい』となったときに、サッと切り替えられるのは便利」
通話内容をレコーディングし、自動で文字起こしすることもできる(※オプション)ため、個別の通話内容の記録・共有も簡単になりました。
「面白い機能としては、3人の同時通話で使える『ウィスパリング』があります。“ささやき”の名の通り、通話メンバーのうち特定の人だけに話しかけられます。例えば、取引先とのハードな交渉の場に上司が同席し、相手方に悟られることなく、リアルタイムで部下にアドバイスする――なんてことができるんですよ」
「最近はAIに関連した新機能も増えていますし、『へえ、こんなこともできるんだ!』という発見が日々あるのはZoomの好きなところです」
グループ内のサポート業務においては、リモートコントロール機能が重宝するといいます。
「別拠点の社員から『システムでエラーが発生した』などといった相談が寄せられることもよくあるのですが、電話だけでは説明が難しく、直接PCを触ることも難しいですよね」
「Zoom Meetingsで相手とつなげば、リモートコントロールを用いて、相手の画面を見ながら指示したり、マウスやキーボードをこちらから動かしたりすることも可能です。全国各地の社員をすぐにサポートできて助かります」
異なる8つの事業会社に勤務する社員へのサポート業務が効率化し、外部業者に依頼するコスト削減にもつながったといいます。
「中小企業こそ、もっと便利にできる」
生産現場や社内外とのコミュニケーション、サポート業務の円滑化など、幅広い領域でZoomを活用するIXホールディングス。
経済産業省認定の「DXセレクション2024」の優良事例に選ばれるなど、その取り組みは地方を拠点とする多くの企業のモデルになりそうです。
「私自身は、そんなにIT得意じゃないんだけどね」。柔らかい笑顔でそう話すIXホールディングスの浜田吉司代表取締役社長は、その言葉と裏腹に、先陣を切ってITへの理解を深めてきた張本人。
忙しい合間をぬって、年初には「ITパスポート」の資格も取得。会社全体のリテラシーを高めようと、社員の同資格取得をサポートする制度も整えました。
