LIXILがショールームのオンライン化に取り組み始めたのは、2020年のコロナ禍がきっかけでした。
多くの企業が緊急事態宣言の発出を受けてから対策を始める中、2018年という早い時期からZoomおよびWeb会議システムを日常的に導入していたLIXILでは、リモートワークへの対応は比較的スムーズに進みました。
一方で課題となったのは、同社サービスの根幹を成す店舗型ショールームが機能しなくなったこと。外出が制限される中で対応策を検討し浮上したのが、オンラインで接客しようという案だったのです。
「緊急事態宣言でお客さまがショールームに来ることができなくなったら、私たちのビジネスはストップしてしまいます。対応策を検討する中で出てきたのが、使い慣れたZoomを使って、オンラインで接客しようというアイデアでした」(安井氏)
こうしてスタートしたオンラインショールームは好評を博し、当初は予約型のみだったサービスに追加されたのが、即時型の「今すぐ相談」でした。

思い立った時にすぐに相談できる「今すぐ相談」は、ニーズを広げるのみならず、従来抱えていたさまざまな課題の解決にも役立ちました。店舗型ショールームに行く手間を減らせたのもその1つです。
顧客の行動を分析すると、商品を決めるまでに平均2~3回、場合によっては5回以上もショールームに足を運んでいました。しかし、店舗型ショールームは特に週末は人気が高く、予約が数週間先まで埋まっていることもしばしば。空いた時間で熱意や興味が薄れてしまう人も少なくないという課題がありました。
21時まで対応可能な「今すぐ相談」はちょっとした空き時間や、仕事帰りの夜間でも思い立ったらすぐ相談でき、コンタクトのハードルが大幅に下がります。
「最初の1回は、現物を見て触れていただくためにショールームにお越しいただき、2回目以降の詳しい説明やプラン作成をオンラインで済ませるなどの使い分けができるようになりました」(安井氏)
離れて暮らす遠方の家族と3世代で相談したり、海外赴任中の家族の意見を一緒に聞いたり――。これまで叶わなかった新たな接客パターンも生まれ、新たな顧客体験の創出の場になっています。
「『今すぐ相談』であれば朝の9時から夜の21時まで相談できるのも好評です。現在の自宅キッチンの高さなど、実際にサイズを測りながら相談・比較もできるなど、従来型のショールームにお越しいただくより便利な点もあったのは大きな発見でした」(安井氏)

ショールーム間の連携がしやすくなったことも、顧客体験の向上につながっています。例えば、フェンスやカーポートなど、一部の屋外型商品は限られたショールームのみで扱っており、専門的な知識が必要となるケースも。オンラインで該当施設やコーディネーターにつなぐことで、より満足度の高い提案をすることができます。
「自社のショールーム同士だけではなく、ホームセンターや家電量販店、リフォーム店など、LIXILのパートナー企業の店頭からつないでいただくケースも増えています。販売員の方が分からないことがあった時にも、その場でショールームのコーディネーターが一緒にお客さまに対応することができるようになりました」(安井氏)