顧客には利便性を、従業員には働きやすさを LIXILがオンラインサービスで発見した新たなニーズと価値

「オンラインショールーム」がZoom Contact Centerと目指す未来

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設立 :

1949年

本社所在地 :

東京都品川区西品川一丁目1番1号大崎ガーデンタワー24F

業界:

製造業

導入ソリューション:

Zoom Meetings、Zoom Contact Center, Zoom Rooms

課題:

コロナ禍で店舗型ショールームへの来館が困難になったことをきっかけにオンラインサービスを開始。「予約相談」に続き、予約不要で利用できる「今すぐ相談」をリリース。オンラインならではの利便性は一定あったものの、画質や音質が安定しない、適切な専門知識を持つコーディネーターとのマッチングが難しい、待ち時間が長いなどの課題があった。

導入成果:

API連携により、自社Webサイト上でリアルタイム混雑状況を把握できる独自UIを開発し、顧客満足度が向上。「スキルベースルーティング」機能を活用し、適切なコーディネーターとマッチングが可能に。リモートワークがしやすくなったことで従業員も働きやすくなり、人材確保・育成にもメリットが生まれている。

業界の常識にとらわれない、大胆なDXをいち早く進めている住宅設備大手のLIXIL。コロナ禍で緊急対応的に始まった「オンラインショールーム」の取り組みを、さらに充実させようと取り組んでいます。

 

同社は2024年秋、予約不要でコーディネーターに相談できる「今すぐ相談」のサービスに、オムニチャネル型のクラウドコンタクトセンターソリューション(CCaaS)「Zoom Contact Center」を導入しました。接客のオンライン化で、顧客体験(CX)の改善だけでなく、働きやすさ、やりがいといった従業員体験(EX)の向上にもつながっています。

 

LIXILが推進するオンラインショールームは、どのような背景から生まれ、どのような仕組みで成り立っているのでしょうか。また、製造業の同社がDXに本腰を入れる理由とは? 施策の全体像と狙いを聞きました。

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IT活用で業務の標準化とシステム化を推進「脱・低利益率の製造業」へシフト

キッチン、トイレ、窓といった住宅設備や建材を取り扱うLIXILは、世界150カ国以上で事業を展開するグローバル企業です。2011年に国内の主要5社の統合によって誕生し、日本の住宅業界をけん引してきました。

 

そんな同社がDXを本格的に加速させるきっかけとなったのが、ベンチャー企業MonotaROを成功に導いた瀬戸欣哉氏をCEOに迎えたことでした。瀬戸氏のもとで掲げられたビジョンは、「仕組みで動く会社」への転換。業務の属人性を減らし、標準化とシステム化を進めることで、より収益性の高い企業体質へと変革する方針が打ち出されました。

 

同社常務役員でCX部門のリーダーを務める安井卓氏はこう話します。

 

「背景にあるのは、製造業の構造的な利益率の低さ。LIXILでも営業やバックオフィスなどの間接部門の比重は大きく、ここをデジタルの力で効率化・標準化していくことで、企業の利益構造そのものを変えていけると考えました」

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そんな改革の1つが、ショールームのオンライン化です。丁寧な個別対応を大切にしながらも、デジタルの力を生かして顧客との接点を拡大し、場所や時間に縛られない新たな体験を提供しています。

 

現在オンラインショールームでは、都合の良い時間を事前に予約してじっくり相談する「予約型」と、話を聞きたい時にすぐ通話できる「即時型」の2種類が用意されており、前者にはZoom Meetings、後者にはZoom Contact Centerが活用されています。顧客はニーズに合わせて相談方法を選択することができ、デジタルならではの選択肢を提供しています。

コロナ禍を機にショールームのオンライン化を推進

LIXILがショールームのオンライン化に取り組み始めたのは、2020年のコロナ禍がきっかけでした。

 

多くの企業が緊急事態宣言の発出を受けてから対策を始める中、2018年という早い時期からZoomおよびWeb会議システムを日常的に導入していたLIXILでは、リモートワークへの対応は比較的スムーズに進みました。

 

 一方で課題となったのは、同社サービスの根幹を成す店舗型ショールームが機能しなくなったこと。外出が制限される中で対応策を検討し浮上したのが、オンラインで接客しようという案だったのです。

 

「緊急事態宣言でお客さまがショールームに来ることができなくなったら、私たちのビジネスはストップしてしまいます。対応策を検討する中で出てきたのが、使い慣れたZoomを使って、オンラインで接客しようというアイデアでした」(安井氏)

 

 こうしてスタートしたオンラインショールームは好評を博し、当初は予約型のみだったサービスに追加されたのが、即時型の「今すぐ相談」でした。

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思い立った時にすぐに相談できる「今すぐ相談」は、ニーズを広げるのみならず、従来抱えていたさまざまな課題の解決にも役立ちました。店舗型ショールームに行く手間を減らせたのもその1つです。

 

顧客の行動を分析すると、商品を決めるまでに平均2~3回、場合によっては5回以上もショールームに足を運んでいました。しかし、店舗型ショールームは特に週末は人気が高く、予約が数週間先まで埋まっていることもしばしば。空いた時間で熱意や興味が薄れてしまう人も少なくないという課題がありました。

 

21時まで対応可能な「今すぐ相談」はちょっとした空き時間や、仕事帰りの夜間でも思い立ったらすぐ相談でき、コンタクトのハードルが大幅に下がります。

 

 「最初の1回は、現物を見て触れていただくためにショールームにお越しいただき、2回目以降の詳しい説明やプラン作成をオンラインで済ませるなどの使い分けができるようになりました」(安井氏)

 

 離れて暮らす遠方の家族と3世代で相談したり、海外赴任中の家族の意見を一緒に聞いたり――。これまで叶わなかった新たな接客パターンも生まれ、新たな顧客体験の創出の場になっています。

 

「『今すぐ相談』であれば朝の9時から夜の21時まで相談できるのも好評です。現在の自宅キッチンの高さなど、実際にサイズを測りながら相談・比較もできるなど、従来型のショールームにお越しいただくより便利な点もあったのは大きな発見でした」(安井氏)

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 ショールーム間の連携がしやすくなったことも、顧客体験の向上につながっています。例えば、フェンスやカーポートなど、一部の屋外型商品は限られたショールームのみで扱っており、専門的な知識が必要となるケースも。オンラインで該当施設やコーディネーターにつなぐことで、より満足度の高い提案をすることができます。

 

 「自社のショールーム同士だけではなく、ホームセンターや家電量販店、リフォーム店など、LIXILのパートナー企業の店頭からつないでいただくケースも増えています。販売員の方が分からないことがあった時にも、その場でショールームのコーディネーターが一緒にお客さまに対応することができるようになりました」(安井氏)

ライフステージの変化に対応する「新しい働き方」

ショールームのオンライン化は、顧客だけでなく従業員にも恩恵をもたらしました。

 

「女性が多い職場ということもあり、これまでは子育てや介護、配偶者の転勤などライフステージが変わる際に退職を選ぶ方も少なくありませんでした。ショールームのオンライン対応で自宅からでも接客できるようになったことから、離職率が下がったうえ、再就職率も上がっています」(安井氏)

 

 商品ジャンルが幅広く、専門知識を必要とする複雑な商材も多いLIXIL。個々のコーディネーターたちに長く働いてもらうことで育成と採用のコストを軽減できるのでは――。

 

 人手不足が深刻化する昨今、人材確保、そして人材育成の両面で会社にとっても大きなメリットになると安井氏は期待を寄せます。「ショールームでの仕事は早めに切り上げ帰宅。子どもの世話を終えてから、21時まで自宅からオンライン勤務」など柔軟な働き方も可能になりました。

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「ベテラン人材が現場に戻ってくる動きが活発化しているのもうれしい変化です。商品について深い知識を持つ人に長く働いてもらったり、再び現場に戻ってもらったりすることは、会社にとってとても大きなメリットとなっています」(安井氏)

「今すぐ相談」にZoom Contact Centerを選んだ理由

当初、LIXILの「今すぐ相談」には、他社の製品が採用されていました。サービス品質をさらに高めるため、システムの再検討を始めたのは2023年のことです。

 

再選定と導入を担当したCX部門 ショールーム統括部 システム企画部でリーダーを務める竹入慶彦氏は、検討段階でZoomから紹介された「Zoom Contact Center」について、当初の印象は「決して、特段優れていたわけではなかった」と振り返ります。

 

予約型サービスですでに利用していたZoom Meetingsと同じユーザーインターフェース(UI)で操作できる点は魅力だったものの、画質や音質については他社製品と大差なく、導入を即決するには至らなかったといいます。

 

 にもかかわらず、約1年にわたる長い検討期間を経て、最終的にZoom Contact Centerの採用を決定した背景には、Zoomの「共にサービスをつくりあげていく」柔軟で協調的な姿勢があったことが大きかったと竹入氏は話します。

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「我々の意見を汲みながら、半年の間に次々と機能がアップデートされていき、最終的には、社内関係者にもシステム移行をスムーズに納得してもらえるレベルに仕上げていただきました」

導入を後押ししたもう1つの要因は、「今すぐ相談」に最適化された独自UIを開発できた点にあります。

 

 こうした即時性のサービスでは、ユーザーが迷わずに問い合わせできるUIであることに加え、各製品に精通した適切なスタッフに確実に早くつなぐことが求められます。その実現を支えたのが、Zoomの「PSO(Professional Services Organization)」という開発支援サービスでした。

 

「PSOは、Zoomと提携する開発パートナーと連携しながらプロジェクトを進める仕組みで、Zoomの機能と即時型ショールームサービスに必要な要素を、我々の要望に合わせて最適な形で組み込むことができました」(竹入氏)

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管理者側にもメリット アカウント管理がシンプルかつ柔軟に

LIXILでは他にZoom Meetings、Zoom Phoneも導入していますが「Zoomプロダクトを横断して活用することは、現場の従業員だけでなく、管理部門としてもメリットは多い」とDigital Service Operationsの松島阿難氏は話します。

 

 Zoom Phoneの導入をリードした同じくDigital Service Operationsの加藤真輝氏は、「有料ライセンスを付与すれば、同じアプリ上で追加機能が利用できるので非常に社内説明がしやすかったです。統一されたUIもシンプルで使いやすく、現場への浸透も速かった」と、振り返ります。

 

 国外も含めて広くITインフラを管理する松島氏が特に重宝しているのは、権限を細かく設定できること。

 

 グローバル企業であるLIXILは海外を含め、約7万5000のZoomアカウントを管理しています。国や地域ごとに管理者を定めることで、ユーザーの追加/削除や有料ライセンスの付与などを、切り出してまかせられるようになったと言います。アカウント管理の煩雑さが軽減し、その国や事業に応じてスピーディかつ柔軟に利用できるのはZoomならではの良さと話します。

ショールームを再定義する「無人スタジオ」という挑戦

LIXILが進めるショールームのデジタル化は、新たなステージへと進化しています。2024年秋、同社は横浜に「LIXILスタジオ港北」と名付けた、ほぼ無人のオンラインショールームを開設しました。

 

 施設内には接客担当者は常駐しておらず、タブレットを手渡す受付スタッフのみ。来館者は予約不要で自由に見て回ることができ、商品について聞きたいことがあれば、手元のタブレットを使ってオンラインで専門コーディネーターに相談できる仕組みです。

 

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「お客さまの中にはコーディネーターによる詳しい説明を望む方も、自分のペースで商品を見て回りたいという方もいます。LIXILスタジオはこの両方のニーズを満たす新しい形のショールームです。オンラインでの接客対応を取り入れることで、お客さまは必要な時だけ専門知識を持つスタッフにつながることができ、LIXILとしては人員を常駐させる場合と比べて運営コストを大幅に削減できます」(安井氏)

DXの核心は「顧客と従業員の体験」をより良いものにすること

Zoom Contact Centerの導入に適している業種について竹入氏は、視覚的な判断が重要なサービスを提供する業種を挙げます。

 

 「商品の違いを感じながら選んだり、要望に合わせてカスタマイズしていったりするサービスでは、電話だけでは説明が難しく、映像や3D画像を通じた視覚的コミュニケーションは欠かせません」(竹入氏)

 

 さらに、顧客の要望をヒアリングしながら一緒に最適な提案をつくりあげていく「コンサルティング型」のビジネスにも適していると竹入氏。自身の経験からも、商品の違いを言葉だけで説明することの難しさを実感しており、ビデオ通話機能を活用したサービスは不可欠だと話します。

 

 安井氏は今後の展開について、さらなる顧客体験と従業員体験の向上を目指してサービスを磨き上げていきたいと話します。

 

「LIXILのDXで最も重要なのは、より良い顧客体験を提供することですが、そのためにはサービスを提供する側である従業員の体験も良いものにしなければなりません。ショールームの取り組みにおけるZoom Contact Centerは、まさにその両面を支えてくれる存在でした」(安井氏)

 

 LIXILでのZoom Contact Center 活用方法など詳細な情報が必要な場合は下記レポートをダウンロードください。

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