新事務棟建設にあたり、老朽化した PBX を更新しフリーアドレス化も目指す
シャトレーゼは 2023 年 5 月、本社・中道工場内に新設した事務棟の稼働を開始し、それに伴う大規模な業務改善プロジェクトを推進中です。中でも最大の取り組みの 1 つとなったのが、社内で使用する電話機のスマートフォン化と PBX のクラウド化でした。
情報システム部 部長 矢﨑 宏氏は、電話環境のスマート化に踏み切ったきっかけについて次のように語ります。「これまで弊社は社内にオンプレミス型の PBX を設置し、旧事務棟オフィスには事務系社員が個人のデスクの上に置かれたビジネスフォンで、外線や内線の受発信を行っていました。しかし、長年活用してきた PBX は保守期間が過ぎ、老朽化していたため、速やかな更新が必要でした。また、本社・中道工場内に新たな事務棟を建設するにあたり、事務系社員の働く環境をフリーアドレス化することが決まっていました。これまでのような固定席にビジネスフォン据え置くという運用ができなくなるため、フリーアドレスに対応した電話環境に移行することが必要だったのです」
PBX の更新にあたっては、従来のようなオンプレミス型を導入すると数百万円単位のコストがかかる上に、IP-PBX に対応するデジタル音声回線の敷設には申し込みから運用開始まで数ヶ月~半年以上の期間を想定しなければなりません。新事務棟の運用開始まで間に合わない可能性があったといいます。
矢﨑氏は「弊社の情報システム部はマンパワーが限られているので、手間と時間をかけずに導入できる手段を必要としていました。また、近年弊社は国内外に生産拠点の新設を急ピッチで進めており、ビジネスの拡張に合わせて迅速かつ柔軟に対応できる電話環境の構築が求められていました。その悩みを IT 支援に協力いただいている伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)に相談したところ、推奨されたのがクラウド型 PBX という解決策でした」と振り返ります。

Zoom One との親和性とコスト優位性、サービス品質で Zoom Phone を選択
クラウド型 PBX ならば、ハードウェアを社内に設置する必要はなく、運用・管理の手間もかからず、業容の拡大にも柔軟かつ即座に対応できます。また、回線の契約後は回線の敷設や装置の構築・設定なども不要になるため、短期導入とコスト削減の両方が期待できます。既に会社からは業務用スマートフォンを支給しているので、アプリからパケット通信を利用した通話を行えば、社内あるいは社外のどこにいても電話を受けることが可能になります。
そこでシャトレーゼではクラウド型 PBX に対応した複数のサービスを候補に挙げて、PoCも含めた比較検討を実施。ライセンス費用、無償アカウントの有無のほか、代理応答、ボイスメール、通話録音、IVR(音声自動応答システム)などの各種機能の充実などを検証した結果、選定したのは Zoom Phone でした。その理由について、情報システム部 製造システム課 課長代理 菅野 翼氏は、「弊社が目指している業務改革と一致していたため Zoom Phone を選びました」と話します。
選定のポイントは主に 3 つあったといいます。第 1 は、Zoomソリューションとの親和性の高さです。シャトレーゼでは既に Zoom One を導入し遠隔会議などに活用していました。Zoom Phone は電話機能を Zoom One に統合させるソリューションのため、遠隔会議と音声通話を統合してワンアプリで利用できるメリットに注目しました。第 2 は、コストパフォーマンスの高さです。他のクラウド型 PBX を活用したサービスに比べ無償アカウントが利用できるため、大幅なコスト削減に貢献できると考えました。第 3 は、電話としてのサービス品質の高さです。比較した他のサービスは音声に特化したものではなかったため、同社が実施した PoC では通話時にタイムラグが発生したり使い勝手が悪かったりしたといいます。Zoom Phone は Zoom One と同じ音声圧縮技術を使用し、一部パケットロスが生じても通話品質を保持する仕組みがあるため、様々なネットワーク環境下でも通話が途切れにくくなります。

Zoom Phone の迅速な導入実現性とビジネス拡張に合わせた柔軟性を証明
シャトレーゼは、Zoom Phone 導入の第一弾として、2023 年 5 月から本社・中道工場と土浦工場において運用を開始しました。また、同社は新事務棟に設置した大小 5 つの会議室と 6 つの商談室に、ビデオ会議ソリューション「Zoom Rooms」も導入。専用の Neat 社製オールインワン型会議デバイスを活用し、遠隔会議における音声・映像品質の向上と、会議開始の手間を削減するなど生産性の向上も同時に実現しています。
菅野氏は「まだ国内外の工場・拠点全てに Zoom Phone を導入できておらず、工場間の通話のために現在もオンプレミス型 PBX とビジネスフォンを一部並行運用する過渡期にありますが、本社の新事務棟と土浦工場では予定期日までにクラウド型 PBX とスマートフォン利用に移行できました。それには CTC と CTC エスピーが運用ポリシー設定からアカウント登録、ID への紐づけ、さらにはユーザ向けのマニュアル作りに至るまで綿密に支援してくれた貢献があったからだと思っています」と述べます。
Zoom Phone による導入効果には主に次のようなものがあるといいます。1 つ目は、電話環境の短期導入。Zoom Phone の採用決定から電話開設までわずか 2 ヵ月で完了しました。それにより、新事務棟の開所に間に合わせることができ、クラウド型 PBX+IP 電話の圧倒的な導入の迅速性と、ビジネス拡張に合わせた柔軟性を証明しました。
2 つ目は、大幅なコスト削減。Zoom Phone は他のクラウド型 PBX を活用する電話サービスに比べ、契約ライセンスに応じた有償・無償ユーザ全体のランニングコストが年額で約 5 分の 1 にまで削減できることが分かり、コスト削減にも大きく貢献しました。
3つ目は、業務効率化と業務品質の向上。同社の情報システム部は人員が限られているため、電話の敷設や開通後の管理など手間をかけずに導入することがプロジェクトのメインテーマのひとつでした。それを Zoom Phone で実現できたといいます。また、同社は電話の利用頻度が多く、特に営業部はフランチャイズ店舗からの電話も受けるため、その数は毎日数百件にも及ぶといいます。Zoom Phone の導入後は、電話を誰が受けたのか、それを誰に取り次いだのかが簡単に可視化できるようになり、業務の引き継ぎやエスカレーションが迅速になったほか、社内の顧客対応ルールに則った応答ができているかをコンプライアンス視点で管理することも可能になったといいます。
Zoom Phoneの導入・運用ノウハウをパッケージ化して他の工場にも展開
今後は、本社・中道工場と土浦工場で培った Zoom Phone の導入・運用ノウハウをパッケージ化し、そのモデルケースを他の工場にも展開していく計画です。また、新設予定の工場にはパッケージを最初から適用することで、同社の目標でもあるスマート工場の実現にも貢献していく考えです。矢﨑氏は、「株式会社シャトレーゼホールディングスでは、ホテルやゴルフ場などの事業も多角的に行っており、その関連拠点も増えているので、シャトレーゼに導入した Zoom の各ソリューションをパッケージにまとめ、手間や時間をかけずにオールインワンで展開することも視野に入れています。そのためには、CTC や CTC エスピーと連携して業種別の最適なパッケージ内容を検討し、効率的に展開できるようにしたいと考えています」と見通しを話します。